知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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J【非連続不定期掲載】 JASRACの音楽教室からの著作権徴収に思う その2

(以下に書くことは、あくまで「私の個人的な意見」です。)

 

 

 

(不定期に、その1及びその1の特別編の続きです。)

 

その1

J【非連続不定期掲載】 JASRACの音楽教室からの著作権徴収に思う その1 - 知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

 

その1の特別編

 J【非連続不定期掲載】 JASRACの音楽教室からの著作権徴収に思う その1の特別編 - 知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

 

 

今回は、その1で書いた論点の①について、書きます。

 

 

と、その前に。

ここで私の根本的基本的なスタンスを書いておきます。

 

私は、著作権及び関係する法制度もJASRAC のような著作権管理団体も必要と考えています。

しかし、その運用には、公正性かつ正当性が求められると考えています。

私は、正しいと考えられることには正しいと、おかしいと考えられることにはおかしいと、主張します。

それにも当然、公正性と正当性とがなければだめです。著作権法制度やJASRAC のような著作権管理団体を理解もせず、自分勝手な理屈を主張する人達、及びその意見を見過ごすことはできません。

 以上。

 

 

閑話休題

 

論点①JASRAC は、「音楽教室での、練習のために講師が生徒の前で楽曲を演奏する行為は、著作権法の『演奏権』に該当する行為、つまり『公衆に聞かせる行為』であり、著作権使用料が発生する。」と主張しましたが、この主張は妥当なのか。(『演奏権』とは?) 

 

私は、ここが一番難しくかつ一番重要な論点になるのではないか、と考えています。

 

 

まず、本論に入る前に確認しておきます。

 

JASRAC は、音楽教室を開いている団体や企業に著作権料を求めているのであって、けっして音楽教室を利用する生徒からは著作権料を求めてはいません。世間一般の反対派の方々はこの点をわざとわかっていないような気がしてなりません。

 

音楽教室側は、生徒が音楽教室に支払うレッスン料に対して、その著作権料を反映して、結果レッスン料を値上げするかもしれません。これにより、形式的にかつ間接的ではありますが、確かに生徒がJASRACに対して著作権料を負担する形にはなります。しかし、あくまでJASRAC音楽教室を開いている団体や企業に対して著作権料負担を求めているのです。生徒に対してではありません。

仮に、これら団体や企業が、生徒に著作権料の負担がかからないようにするために、あくまでその負担を自らだけにとどめれば、生徒は当然著作権料の負担をせずにすみます。実際には、そんなことはしないし、できないでしょうけれども。音楽教室を開いている団体や企業は、慈善事業で音楽教室をしているわけではありません。あくまで「営利目的、ビジネス」なのですから。

 

このことをふまえて。

 

さて、私は、「『演奏権』とは、もともとコンサートとかライブとかイベントとかにおける、演奏を『見にきた、聴きにきた』オーディエンスに対するそのアーティスト側の『演奏』行為に対する権利だった。」と考えています。

 

しかし、著作権で「演奏権」が認められてから、その後かなりの日数が経ち、考えは変化しました。

 

「演奏」といえば、普通「楽器の演奏行為(歌唱行為含む)」と思いますが、例えば「アナログディスク(レコード)やCDをかける行為」も「演奏」行為です。ですから、ラジオやテレビで曲をかける行為もクラブでDJがするターンテーブルでのレコードプレイも「演奏」行為です。

(もっとも放送では、いろいろ権利関係は複雑になります。番組を収録する場合は既存の曲を使うとそれは確か「複製」行為にあたり、その収録した番組を放送した場合に「演奏」行為となるはずです。また放送自体には「公衆送信権」という違う権利も発生します。ちなみにテレビドラマだとさらにいろいろ権利が複雑にからまってきます。うああーっ、Why copyright?(笑))

 

閑話休題。「演奏」行為概念は他にも及んでいます。店舗でBGMとしてCDをかける行為や、スポーツジムなどでスポーツする際に曲をかける行為、ダンス教室などでの踊るための音楽をかける行為、これらは少なくとも現在においてはみな全て「演奏権」の対象です。

カラオケは、ちょっと複雑で面倒なので、「演奏権」に該当するものもある、とだけここでは書いておきます。

そして今回、JASRAC は、音楽教室における講師の「演奏」行為も「演奏権」の対象となる、と主張したわけです。

 

あくまで個人的な意見ですが、「音楽教室における講師の『演奏』行為まで『演奏権』の対象とするのは正直無理がある。」と思います。

講師の「演奏」は、確かに生徒に「聴かせる」ためのものではありますが、それは「演奏」技術の教授のためのお手本を示すための行為なのであり、本来の「演奏権」における行為とは違うと思うのです。しかも、実際のレッスンにおける講師の演奏は、回数はそれなりにあるかもしれませんが、一つ一つは短いと思います。講師が一曲を通しで演奏することはあまりないと思います。全くないと言えないでしょうが。これらから、音楽教室における「演奏」行為は、かなり特殊なものだと、私は考えます。

とはいえ、ダンス教室なども「演奏権」の対象となっている昨今、JASRAC はこのまま考えを変えることはないだろうと思います。

結局最終的に裁判沙汰になって決着するのではないか、と私は思います。

 

 

ただですね、あくまで個人的な意見ですが、音楽教室が著作物たる音楽の曲を『利用』して『営利目的で』事業を行っている事実」、そのことは事実としてあるので、そうである以上は著作権料はそこに発生するものだ、とは思います。著作権の商用利用には、著作権料が発生するのは当然だ、と私は考えます。それが「演奏権」におけるものかどうかはともかく。もっとも、「演奏権」以外に他にあてはまる適切な権利は見当たりませんし、著作権法を改正してあらたな権利をつくることなどあり得ないでしょう。だから、「演奏権」でいくしかない、ということになるでしょう、おそらく。

 

 

 また、ちなみにですが、私は、音楽教室における講師の「演奏」行為に「演奏権」が発生するとするよりも、音楽教室における生徒の「演奏」行為に着目し、「『カラオケ法理』的な考え」で解釈した上で、「実質的利用主体である生徒ではなく、音楽教室に利用主体がある」、と考えた方がむしろいいような気がするのです。この場合でも、音楽教室側が著作権料を支払わなければならないことになります。

また、この考えにおいても、ではこれは著作権の何権にあたるのか、という問題がついてまわりますが。何にせよ、話がずれてくるので、これについてはまた別の機会に書くと思います。

 

 

以上のことから、私は、結局最終的にJASRAC の主張が認められる、ことになるような気がします。料率は見直されるとは思いますが。

 

 

 

しいてJASRAC に落ち度があるとすれば、 「なんでいまさらになって思いだしたように著作権料を求めてくるのか、これまで求めてこなかった以上どんなに正当な理由があるとしても誰も納得できないだろう。」、この一点につきると思います。

 

 

(不定期に、その3に続く。)