知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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韓国と日本では、パクリ作品自身にもその作品の二次著作物としての著作権があるのです 【追記有り】

久々にこのブログを書きます。半年以上ぶりですかね。まあ、今回は、やはりちゃんと書いておかないと、という思いが強くなりましたので。

 

 

 

韓国で最近あったテコンVの裁判の判決に、韓国でも日本でも勘違いしている人が沢山います。そもそも今回のこの裁判がどういうものか、正しく理解していない人が多い上に、マスコミが正しく報道していないので、間違った理解がされっぱなしなのです。

 

 

今回の裁判は、韓国のとある業者A社が、テコンVの会社V社の許諾を得ずに、勝手にテコンVのグッズを製造販売したことに対してV社が裁判に訴えた、というべきものです。

 

この裁判の判決は、V社側の勝訴でした。当たり前です。なぜなら、仮にパクリ作品(ただし完全なデッドコピーはダメです)であろうが、仮に一次著作物権利者の正当な許諾を得た二次著作物だろうが、あるいは仮に完全オリジナルだろう(この場合はなおさら当たり前です)が、V社のテコンV自身(今回の場合は二次著作物として)の著作権は法制度上認められるからです

 

つまり、今回の裁判において、テコンVがマジンガーZのパクリかどうかということは、全く関係のない話なのです。単に、V社のテコンVに対するA社による著作権侵害が認められた、というだけの話です。パクリ作品自身にも著作権が認められるのが、韓国の著作権法制度なのです。

 

このことは、韓国だけでなく、日本でも全く同じです。日本で同じ裁判がおきれば、同じ結果になります。日本でも、パクリ作品自身に対する著作権は認められますパクリ作品に対して法制度的に対抗できるのは、パクられた元作品の著作者、著作権者、権利者(以下、著作権者等とまとめて表現します。)だけなのです。

 

 

考えてみましょう。例えば、私が著作権者等の許諾なく勝手に、とある有名な漫画・アニメ作品のスピンオフストーリーの漫画同人誌を作り、コミケ等で販売した、とします。

 

はたして、この漫画同人誌について、私の著作権はあるのでしょうか。

 

答えは、「あります」。

 

もちろん、オリジナルの漫画・アニメの著作権者等は、私が作って販売した漫画同人誌に対して、著作権侵害で対抗することができます。

 

でも、私が作って販売した漫画同人誌に対して、第三者が勝手にグッズか何か作って販売したら、それは著作権侵害で、私はその第三者に対抗することができます(もちろん一次の原著作権者等もです)。また、第三者がその漫画同人誌をインターネットに勝手にアップする等すれば、これも著作権侵害で、私はその第三者に対抗することができます。

 

まあ、実際のところは、いろいろ複雑な部分があるので、裁判でもおこさないとなんとも言えませんが。韓国では、実際に裁判でそういう判断がなされた、ということです。

 

普通、著作権侵害をしたものがさらに著作権侵害されても、裁判沙汰になることはないでしょう(自らの恥をさらすようなものです。)が、今回はV社が マジンガーZをパクっていないと考えているからこそ、裁判を起こしたといえるわけではあります。

 

でも、その裁判でテコンVがマジンガーZのパクリではないと裁判所が明確に認めたわけではないようで、どうやらこの点はグレーのままでこの裁判の判決を出したようです。

 

 

 

さて、アメリカでは事情が少し異なります。

 

アメリカの著作権法制度では、明確にパクリ作品自身には著作権は認められません(根拠条文は、確か米国著作権法第103条だったかと思います。)。許諾を得て制作した正当な二次著作物作品ならば、その著作権が認められます。

ですから、アメリカで、漫画・アニメファンが無許諾で勝手にスピンオフストーリーの同人誌を作っても、その同人誌自身の著作権は認められません。

 

ですから、第三者が、同人誌の絵を勝手に使ったり、インターネットに勝手にアップしても、それに対して、二次著作の権利者は著作権侵害で訴えることはできません。

 

 

テコンVの裁判が、もしアメリカで行われた裁判ならば、テコンVが完全オリジナルでマジンガーZのパクリではないことをV社が裁判で立証しない限り、V社はA社に敗訴することになるでしょう(もっとも、マジンガーZ著作権者等が訴えてきたら、A社は敗訴するかもしれません。)。

 

 

 

ちなみに余談ですが、私は個人的には、作品にでてくるロボットの外観的には、テコンVはマジンガーZのパクリだと思っています。

 

 

 

【追記】

もし仮に、V社がマジンガーZのことを全く知らずにテコンV作品を作ったことが認められた場合は、V社はマジンガーZに対して著作権侵害をしたことにはなりません。