カラオケ歌唱動画とYouTube 著作権法制度的観点 その1
昨年の12月になかなか興味深い判決が、東京地裁でなされました。
ある曲をカラオケで歌っているところを撮影した動画をYouTubeにアップした人を、第一興商が「著作隣接権」侵害で訴えたそうです。そして東京地裁は、その訴えを認め、第一興商は勝訴したそうです。
私は、最初この判決に違和感を感じましたが、その後いろいろ調べ、著作権法制度を見直した結果、現在では、東京地裁の判断は(法制度的には)間違っていないと考えております。
「YouTubeはJASRAC等著作権管理団体と包括的利用許諾契約を結んでいるから問題ないのでは?」とお考えの方がいらっしゃるかと思います。
確かにYouTubeはJASRAC等著作権管理団体と包括的利用許諾契約を結んでいますので、「著作権」については問題ありません。そう「著作権」については。
今回の裁判は「著作隣接権」侵害の裁判です。「著作隣接権」はJASRACの管理管轄外、つまり包括的利用許諾契約の対象にはなりません。ですから、別途「著作隣接権」者から許諾を得なければ、YouTubeにアップすることはできません。
YouTubeは、現在もCD音源は原則アップできないはずですが、それはCD音源は「著作隣接権」が絡んでくるからです。包括的利用許諾契約で「著作権」はクリアになっても、「著作隣接権」を持つレコード会社に許諾を得た上でないと、CD音源はYouTubeにアップできません。もしYouTubeにアップされているものがあるとしたら、何らかの形で許諾を得るなどして「著作隣接権」についてもクリアになった上でアップしたか、あるいは違法アップロードであるもの(YouTubeはそのことに気づいていないだけ)と思われます。
今回の裁判の場合もこれと同じでしょう。第一興商はレコード会社と同様に「著作隣接権」を持っているわけです(おそらく「レコード制作者の権利」と「有線放送事業者の権利」の両方が当てはまるのではないかと私は考えていますが、前者の方が大きいかと思います。)。
ですから、今回は被告は第一興商に「著作隣接権」について許諾を得ずにアップしたため、問題となり裁判沙汰になったのだと思います。
さて、被告の方は「カラオケを歌っている映像がメインであり、けっしてカラオケの音源音声やモニター画面を撮影する意図、侵害の意図はない。」というように主張したようです。
これについては、次回に「著作権法第30条の2」をもとに考えてみたいと思います。
(その2に続きます)