カラオケ歌唱動画とYouTube 著作権法制度的観点 その3
(その2の続きです)
前回、前々回と、カラオケ歌唱動画をYouTubeにアップする行為が、法制度的に権利者の権利を侵害していると書きました。とはいえ、実際に権利者に損害を与える行為であるかどうか、私には疑問です。だからこそ、前回に書いた3要件のうち、③についてだけは適用になる、と書いたのです。
もっとも、そのあたりは、カラオケ機器メーカーも意識しているようで、今回の裁判の原告である第一興商(DAM)にしろエクシング(JOYSOUND)にしろ、ネット上にカラオケ歌唱動画をアップするための何らかのサービスは用意しているようです。
第一興商やエクシングが、これまでアップされたカラオケ歌唱動画に対しその削除要請をし続けてきたのは、実際の損害はなくとも、少なくとも形式的には「著作隣接権侵害」である以上放っておくわけにはいかなかったのだと思います。そうしないと、黙示許諾をしたこととなり、いずれ悪質なアップが起こりかねない、と考えたのかもしれません。そして今回の裁判の被告は、第一興商による再三の削除要請に対してそれに応じなかったから、今回のようなことになってしまったのだと思います。
私は、最初、第一興商のやりすぎ、東京地裁の暴走、とまで考えてしまいましたが、現在では仕方のない当然のことだったと考えています。
いろいろな方が、これをきっかけに議論が深まればいい、とおっしゃられてます。私は、著作権についての理解が深まるきっかけになれば、と願ってやみません。