知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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現行著作権法制度の限界か?JASRACの限界か?

(今回も、以前に書き残っていた下書きをアップします。)


前回からの続きなのですが、何故突然こんなことを、前回と今回で書いているかというと、ふと編曲権について気になっていろいろ検索してみたところ、とある裁判事例を知ったからです。

いわゆる「大地讃頌」事件です。ジャズバンドが合唱曲である「大地讃頌」をジャズアレンジに編曲して演奏、録音してCDを出したところ、同一性保持権と編曲権を問題として「大地讃頌」の作曲者が東京地裁にCDの販売差止の仮処分を求めたもので、最終的には、今後演奏せず、CDを出荷停止にすることで、和解が成立しました。

現行著作権法に照らしあわせてみれば、複製権のみならず、二次的権利である編曲権、そして著作者人格権である同一性保持権にも関わることであるので、これらの権利を全てクリアしなければなりません。
権利をクリアしようと、ジャズバンド側はJASRACに手続きをしたわけですが、なんとJASRACは、著作者人格権である同一性保持権と編曲権については、著作権管理をしていません。

結局ジャズバンドは複製権しかクリアにできなかったわけです。それで原著作者(作曲者)は編曲権と同一性保持権が侵害されたと、裁判所にCDの販売差止の仮処分を求めたわけです。

まあ、ポピュラー音楽では、編曲について、編曲権と同一性保持権の許諾を得ることは普通しないらしいです。しかし、合唱曲の作曲者は、純音楽(純音楽ってどういう(笑))の方らしいので、どうやら認識のズレがあったようです。もちろん合唱曲の作曲者の方の認識が正しいことはいうまでもありません。

ある弁理士のブログによりますと、この事件以後、作曲者に編曲権と同一性保持権の許諾(正確には同一性保持権は不行使の約束です。許諾できませんから。)を直接求めるようになったらしいです。つまり、これまで、ポピュラー音楽においては、この点について、おそらく何もされていなかったということです。ポピュラー音楽では、他の人のカバーをするとき、編曲するのは当たり前で、いちいち作曲者に許諾を求めてはいない、ということだそうです。

とはいえ、やはり同一性保持権と編曲権の許諾(正確には同一性保持権は不行使の約束)を求めるのが正しい筋というものだと思います。
でも、それをもっと効率よくできないものでしょうか。

同一性保持権については、なかなかこれは難しいだろうと思います。同一性保持権については、これは著作者人格権ですから、JASRAC著作権管理事業者の管理事業範囲をこえています。ですから、同一性保持権にひっかかる場合は、著作者に直接許諾を得て行ってください、ということになります。著作権法上、そういうことになります。でも、著作権法制度をもう少し融通のきくものに変えられないものか、とは思います。

そして、むしろこちらの方が非常に重要ですが、編曲権の管理をJASRACは何故しないのか?が非常に疑問です。こちらは、JASRACが管理を行っても問題はないと思うのですが。むしろ、著作権等管理事業法の理念に照らし合わせれば、JASRACはここまで管理するべきではないでしょうか。
なぜなら、著作権等管理事業者は、「著作権の問題を調整しクリアにして著作物の利用をはかること」に、その存在意義があるからです。著作権等管理事業法ができる以前から、JASRACは存在しています。ですが、この法ができ、現在この法でいう著作権等管理事業者としてJASRACは認められている以上、編曲権においても、著作権の問題を調整しクリアにして、著作物の利用をはかることができるようにしていくことが、当然だと思います。著作者人格権ではないのですから。
私には、「権利処理がいささか複雑で面倒だから」程度の理由で、JASRACは編曲権の管理をしていない、としか思えません。いわば「これはすべき業務をしていない、放棄さえしている」と言ってよいのではないでしょうか。もし何らかの法規で、JASRACはここまでしなくて良いとされているのならば、その根拠法規と該当条項を、教えてほしいものです。



これまで書いてきたことを踏まえ、あらためて、私の主張をまとめて書きます。

著作権法を改正し、著作権等管理事業者が著作者人格権についても何らかの形で管理が可能になるようにする。
著作権等管理事業法もそれに伴い改正、「著作権の管理範囲は、全ての著作権著作者人格権+全ての著作財産権)(さらには、著作隣接権や、出版権等までも含む)に及ぶ。」と明確に定めるとする。また、これらの管理に必要な補助的内容の規定もいれていい(必要ならいれるべき)。

かなりラジカルな提案なのは承知しております(笑)。