知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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原了郭の「黒七味」とロッテリアの「京都黒七味『風』」問題(2)

(1の続きです)

さて。
原了郭の、1つ目の商標ですが、もし「黒七味」の部分だけで商標出願していたらどうだったでしょうか。おそらく特許庁に拒絶されていたと私は考えます。それは、「黒七味」は、少なくとも「七味」の部分は普通名称であるといえるでしょうし、「黒七味」全体は記述的商標であるといえる、と考えられるからです。別な言い方をすれば、前者は商標法第3条第1項1号、後者は3号に抵触すると考えられるからです(これは、2つ目の商標でも同じ様に考えられます。)。では、1つ目の商標はなぜ登録されたか?それは、「黒七味」以外に、「京都 祇園名物」「本家 原了郭製」という文字が左右に配置されていて、全体として、「京都 祇園名物 黒七味 本家 原了郭製」の商標である、と考えられるからです。ですので、「黒七味」だけでしたら登録は認められなかったのではないか、と考えます。しかし、これでは、「京都 祇園名物 黒七味 本家 原了郭製」でないとこの商標を使用したことになりません。少なくとも「黒七味」又は「京都 黒七味」だけでは、この商標を使用していることにはならないと思います。

では次。2つ目の商標は、「黒七味」の文字だけの商標なのに、なぜ登録されるに至ったのか?それは、2つ目の商標の指定商品が非常に限定的な内容だから、だと私は考えました。1つ目の商標の指定商品は「香辛料」です。2つ目の商標の指定商品は「白胡麻・黒胡麻・一味・山椒・けしの実・麻の実・青のりを主原料とし前煎りした後さらに手もみで練り合わせて製造した七味唐辛子」と、非常に限定された内容で登録されています。
以下は私の推測ですが、おそらく、最初の出願の際の指定商品は単に「香辛料」あるいは「七味唐辛子」だけであったと、私は思っています。これだと、指定商品の範囲が漠然としていて広く、そして1つ目の商標のところで書いた理由と合わせて考えれば、やはり拒絶されてしまうのではないでしょうか。実際、拒絶された記録があります(なお、その拒絶の理由までは私にはわかりませんでした。)。そこで、特許庁に拒絶不服を申し立てつつ、指定商品を「香辛料」あるいは「七味唐辛子」ではなく、「白胡麻・黒胡麻・一味・山椒・けしの実・麻の実・青のりを主原料とし前煎りした後さらに手もみで練り合わせて製造した七味唐辛子」という、実際に「原了郭が製造販売している商品」に限定した形にその指定商品の補正をして、結果最終的にクリアして登録できたのではないか、と私は考えております。あくまで、自ら製造販売している商品に限定して「黒七味」という商標名を使用する形にすることで、初めて登録が認められた、ということです。
ですから、この場合、他のレシピによる七味唐辛子又は香辛料全般に対して「黒七味」という商標名を原了郭だけが使用するということは認められません(ただし、1つ目の商標の形での使用ならば、問題はありません。指定商品は「香辛料」なのですから。)。
つまり、2つ目の商標については、原了郭は、登録内容である自社の「黒七味」レシピ以外の形で製造販売する商品に対しては、原了郭自身にもこの商標を独占的に使用する権利(専用権。次回で説明します。)はない、ということです。

結局、結論として、原了郭が持つ商標権の権利範囲は、以上のようにかなり限定的なもの、なのではないでしょうか。
その帰結として、原了郭が持ち商標権の範囲では、必ずしもロッテリアに対して商標権を行使することはできないのではないか、と私は考えます。


これは、あくまで、私の考えにすぎません。
しかし、何にせよ、登録内容を確認すると、その登録内容は1つ目の商標2つ目の商標どちらにしても「限定的なもの」である、と見受けられます。なんとか商標登録しようとした、原了郭の頑張りが感じられます。
しかし、「限定的なもの」ゆえに、その権利行使も「限定的なもの」になるのではないでしょうか。



と書きながら、さらにひっくり返します(笑)。

上記をふまえて考えると、ロッテリアは、別に原了郭と同一の商品を作って販売しているわけではなく、原了郭の商標権を侵害していないと考えることができるのですから、実際のところ何の問題ないのではないか、と思えます。

ですが、実はそうは問屋が卸しません。

商標には、先に書いたような「専用権」と、それとは別の「禁止権」があります。原了郭はこの「禁止権」をふまえて、ロッテリアに対して「商標権侵害である」とクレームをつきつけた、と考えられるのです。


(3に続きます)