知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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【緊急】 2020年の東京五輪のエンブレムについて

2020年の東京五輪のエンブレムが、ベルギーのとある劇場のロゴマークと酷似している、ということで話題になっています。
なんか、劇場側のデザイナーは弁護士とともに、IOC東京五輪組織委に対し、2020年東京五輪のエンブレムを使用しないよう申し立てたらしいです。
確かに、ぱっと見酷似はしています。
(なお、エンブレム、ロゴについては、すみませんがググるなどされて御確認ください。)

先に結論から言えば、私は、今回の件について「法制度としては問題ない。」と考えています。
しかし、「組織委や(政府を含めた)関係者には説明責任があり、よって、『問題がない』と言うならば、『商標調査はしたから問題ない』ではなく、誰もが理解でき納得できるレベルで、噛み砕いた説明をちゃんとしっかり行うべきである。」と考えています。
(そもそも東京五輪の責任者は誰でしょうか。私には全くわかりません。この責任者には、ちゃんと説明する責任があります。その責任をまっとうしないのは問題ではないでしょうか。そしてこの責任者が不明というのは、加えて問題としかいいようがありません。新国立競技場の問題にしても、各会場の問題にしても、案内ボランティアの制服問題にしても、今回のエンブレム問題にしても、ちゃんと、公的に説明をしっかりできる人は、組織委側にいないのでしょうか?)


エンブレムの件、話を進めます。


まず、「法的に問題がない」という点ですが、例えば、弁護士の唐津真美さんがyahooニュース(というより弁護士ドットコムか)の記事でお書きになったように、著作権と商標とで、わけて考えることができると思います(といいますか、そう考えるべきかと)。唐津弁護士のこの記事は、とてもまとまって書かれていて、ぜひお読みください。私のこのブログの千倍ぐらい素晴らしいです。
(もっとも、これは国際間の問題ですから、厳密にいえば、ベルギーやEUの法制度や、著作権や商標の国際間条約もふまえて考えなければならないとは思いますが、まあ、本質的なところは共通していると思いますので、日本法ベースで私は書いています。)

まず、著作権としてですが、私も、唐津弁護士と同様に、東京五輪側エンブレムもベルギー劇場側ロゴも「著作物性が低い」と思います。著作物性が全くないとは言いませんが、かなり低いと思いますので、著作権を主張すること自体に無理があると思います。また、個人的には、誤認混同がおきることは限りなくゼロだと思います。
なんていうか、著作物としては、どちらも低レベルだと思いますので、なんだかなと個人的には思っています。はっきり言って、円と四角形の組み合わせでデザインされたシンプルな絵に対して保護すべきほどの著作物性があるのかどうか、私は非常に疑問に思います(その意味で、一部の現代美術作品に対しては著作物性が認められないものがあると私は考えます。例えば、デュシャンの「泉」に著作物性はほとんどないと私は考えます。ですが、芸術性はかなりあると考えます。芸術性があるかどうかということと、著作物性があるかどうかということとは、全く別の問題だと私は考えます。)。また、かたやモノトーンで、かたや多少カラフルな色遣いですが、これらもありきたりなものにすぎず、特に著作物性を認めるレベルではないと私は考えます。
よって著作権を主張するのは非常に的はずれなことだと、私は思います。


ちなみに、組織委側は商標と著作権(主として商標)で、ベルギー劇場側は著作権のみで、それぞれ主張しているように思います。そして、ベルギー劇場側は意図的に著作権を主張する戦略をわざととっているように思えてなりません。おそらく弁護士の入知恵かと。でも、やはりどうしても私には著作物性があるとは考えられないのです。
閑話休題著作権にせよ商標にせよ、裁判でないと最終的な結論をだすことはできないでしょう。とはいえ、今回は裁判をするほどのレベルではないと、私は考えますけどね。


次に、商標です。これも、前述の唐津弁護士が弁護士ドットコムの記事にお書きになったことにつきる、と思いますので、詳しくは唐津弁護士の記事をお読みいただきたいのですが、私は、デザインが酷似している以上、デザインそのもの自体は抵触すると考えます(前述のようにデザインが単純でシンプルであっても、商標においてはそのことは全く関係なく、著作権とは違い、商標としては有効です。商標性有り、とでもいいますか。)が、商標として現実としての誤認混同性(つまり、東京五輪のエンブレムを見てベルギーの劇場のロゴと間違える、あるいはその逆)は極めて低いと思いますので、結論として「商標としては」問題はない、乃至はあるとしても限りなくゼロに近い、と考えます。ですので、結論として、商標としても問題はないと考えます。
(このベルギーの劇場ロゴ、日本でも、現地でも、国際的にも、商標登録はされていないようです。劇場自体は歴史的に古いので、おそらく先使用権があるかもしれませんが、果たして他国開催の五輪エンブレムを相手にできるほどの力はあるのでしょうか。そもそも、商標は属地主義ですからね、国際商標的に先使用が認められることはないでしょう。)。
(後で知りましたが、このベルギーの劇場ロゴは、2013年から使用し始めたそうです。)


以上が、非常に簡単ですが、私が考える「法的に問題がない」理由です。より詳しいことは、私以上にはるかに素晴らしい説明をされている、唐津弁護士の弁護士ドットコムの記事をお読みください。


とはいえ、法的に問題がなくても、全ての人々に対して、前述のとおり、ちゃんと説明をはたす義務が、組織委や関係者にはあると思います(この説明責任についても、前述の唐津弁護士は御指摘なされていて、本当に素晴らしいです。もう私のこのブログは、唐津弁護士の記事のパクリといって過言ありません(笑)。)。その義務をちゃんとはたさないことは、社会的に問題だと思います。組織委は「商標調査したから問題ない」と言ったそうですが、調査をしても現にこのような酷似したマークがでてきた以上、この酷似のマークに対しての見解を、ちゃんと誰もが理解し納得できる程度に説明をしなければ、余計なトラブルを招くだけかと思います。

このエンブレムデザインについて調査までして採用の決定をした以上、組織委にはデザイナー以上に説明責任の義務があると思います。それができないなら、組織として失格ではないでしょうか。



追記
唐津真美弁護士は、骨董通り法律事務所の方なのですね。この件にはうってつけかもしれませんね。