ベ【非連続不定期掲載】 ベストライセンスへの対処 その1 ベストライセンスへの正しき理解パート1
(こちらも非連続不定期で書いていきます。)
PPAP商標で巷をにぎわしましたベストライセンスと上田育弘氏、本当にいいかげんでうざくて邪魔な存在ではありますが、これに対しては、結論は基本として「動ぜず何もしない」ことが大切だと思います。
「動ぜず何もしない」と書きましたが、正確には「こちらからはけっして向こうに対して『先に』アクションをおこさない。」ということです。
そのかわり、向こうが具体的になんらかのアクションをおこしてきたときにはそれに対して適切に対処するため、及びいざこちらが権利化が可能になったときに確実に権利化できるようにするため、やるべきことはしておき、準備するものは準備しておき、そしてベストライセンスの動向確認としてJ-Platpatをこまめにチェックして、ぬかりなきようにしておくことが肝要だと思います。
これから非連続不定期で数回にわけて、「ベストライセンスへの対処」と銘打って書いていきたいと思います。
今回は、その1として、「ベストライセンスへの正しき理解」パート1を書いていきたいと思います。
「ベストライセンスへの正しき理解」と書きました。正しき理解と適切な対処を心がけ実行できれば「ベストライセンスなんてちっとも怖くない、ただうざくて邪魔な存在」である、ということです。
さて、巷の方々がベストライセンスに対して正しく理解されていないように思えることの1つが、ベストライセンスは、まだ商標「出願」をしているだけでしかなく、その商標出願は「登録にはいたっていない」ので、当然「商標権を持つにいたってはいない」、ということです。
ただ、「出願により生じた権利」として、実は、商標法上「商標の設定登録前の金銭的請求権」というものがあり、商標法第13条の2第1項に規定されています。
これは、「出願中登録前の段階での、出願商標に関わる商標を出願商標の指定商品・指定役務に関わる商品・役務に使用している他者に対して、その行為によって生じた損害を(登録後になってからだが)請求できる。」というもので、暫定的に出願によって生じた財産権とその行使(但し登録となった後でしかできない)を商標法上認めています。
その要件として、必ず「『出願中』登録『前』の段階で、その他者に対して『警告書』を送らないと」その権利を(登録となった後で)行使できません。
そして、カッコ書きで前述しているように、あくまでその権利行使そのものは「登録『後』」でないとできない、商標権を持った後でないと行使できないと、商標法第13条の2の第2項で規定されています。
ちなみに、審査が拒絶され商標登録されない場合には、同条第4項により、この請求権ははじめから生じなかったとみなされます。権利がない以上、権利行使などできるわけがありません。
ベストライセンスは、おそらく中途半端にこの条項文を根拠にしているのだろう、と思われます。
ベストライセンスが侵害を主張するいくつかのものについては実際に警告書を送ってはいるのでしょうが、ベストライセンスの該当出願商標が登録されていない以上、前述の通りベストライセンスは権利行使をできるはずがありません。
その2にて書きますが、ベストライセンスの出願には不備な点がある、つまり瑕疵ある出願なので、その意味でも商標登録されることは普通に考えてまずありえない、と考えられます。
つまり、前述の警告書が送られてきても、商標登録されなければ権利行使されることはけっしてありません。警告書が送られてきても、あわててはいけません。それこそベストライセンスの思うつぼ、です。
ベストライセンスが商標出願により持っている権利は、前述の(権利行使ができるかどうかすら怪しい)「商標の設定登録前の金銭的請求権」の他、「商標の先出願に関わる権利(先願権)」のみです。それは、「先に審査される権利」であり、「審査で登録要件が認められれば、その段階ではじめて商標権を得ることができる(もちろん認められなければ、商標権を得ることはできません。)。」だけの話です。いや、出願料を支払ってないので、審査すらされていません。ですので、当然商標権を持つに至っていません。商標登録されていない以上、ベストライセンスは商標権を持っているわけがなく、よって前述の「商標の設定登録前の金銭的請求権」を含め、商標権を行使できるわけがありません。ならば、前述の警告書などおそれることはありません。
商標権は持っていないのに、「商標の設定登録前の金銭的請求権」、そして「商標ライセンスの話」などちゃんちゃらおかしいのです。
(非連続不定期に、その1パート2へ続きます。)