知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

映画「デス・ノート」?

えー、世間では、年末年始休みに入った企業も多いようですが、うちの会社は今日までで、私は今日も出社です、トホホ。
まあ、今年最後のブログです。


今回のブログは、私がとあるSNSで書いたものと、基本的に同じで、これの表現内容を多少変えたり、書き加えたりしたものです。セルフリメイクということで(笑)。



なんか、映画「デスノート」が、間もなく、来年1月くらいに劇場公開されるらしいです。ええっ、映画「デスノート」?

これ、日本のオリジナルのデスノートとは全く関係のない、原タイトルが「Let Us Pray」という、海外のホラー映画だそうです。
日本の配給会社が、「デス『・』ノート」という邦題(オリジナルデスノートとのタイトルの違いは、『』で囲んだのみ)をつけて、間も無く劇場公開するらしいです。
また、ストーリーは詳しく知りませんが、「ノートに名前を書かれたものは死ぬ。」というアイデア自体は同じらしいとのことです。


さて、著作権的に問題はないのでしょうか?

この海外の映画の原タイトルがもともと違います。この点は重要です。この海外ホラー映画は、イデアは借用しても、タイトルもストーリーも真似をしていないので、その限りにおいては、著作権侵害ではありません。イデアが同じでも、それだけでは著作権侵害にはなりません。

タイトルを真似ている、タイトルが同一類似だとしても、少なくとも日本では、タイトルそのものには著作権はないと考えられています(タイトルはストーリー内容とあわせて、はじめて著作権保護されると考えられています。タイトル単独では保護されないとされています。)ので、ストーリーが違えば、少なくとも日本ではタイトルだけの酷似のみで著作権侵害とされることはないでしょう。
そして、前述のとおり、「ノートに名前を書かれたものは死ぬ。」というイデア自体は、著作権では守ることはできません

ですので、この海外のホラー映画のストーリーがオリジナルの日本のデスノートに似ていない限りは、日本の著作権法制度上ではどうしようもなく、よって著作権侵害にはならないでしょう。

何というか、著作権の死角をうまくついているといいますか。ですから、残念なことに、日本の著作権法制度上問題はないと言えるでしょう。


しかし、
著作権は問題なくても、不正競争防止法違反にはならないでしょうか。

デスノート」という人気コンテンツに便乗しようとしている、フリーライドしている点が、私は気になって仕方がなく、不正競争防止法違反ではないかと私は考えます。売れている製品と誤認しかねない酷似した名前をつけた製品を販売する行為、これと同じようなことをしているように私には思えてしまうのです。

この海外のホラー映画を、日本の配給会社が日本での配給においてこの「デス・ノート」という邦題をつけて売り込んでいるわけですよね。
だから、悪いのはこの配給会社でしょう。この配給会社を、不正競争防止法違反で、集英社日本テレビ、日本のオリジナルの映画版デスノートを制作した会社、広告代理店、つまり映画の制作委員会側、あと原作漫画の原著作者は、訴えることができるのではないか?とふと思いました。裁判で勝訴すれば、「デス・ノート」という邦題の使用を差し止めることくらいは、できるのではないでしょうか。損害は現時点でまだ発生しているとはいえないでしょうから、おそらく損害賠償は求めたところで認められないと思います。


そもそも法律以前に、この配給会社はいったい何を考えているのでしょうか?と思いました。こんなことをしたら問題になると思わなかったのでしょうか?

そうか、もしかして、炎上マーケティングを狙っているのかもしれません。話題づくりにはなるかもしれませんし、この海外映画自体がそれなりに面白いものであるならば、うまくいけばヒットするかもしれませんから。



※著作物の題号に関する、不正競争防止法判例は下記の通りです。

著作物の題号の不正競争防止法違反として、その違反を認定した裁判例は、「ファイヤーエンブレム事件」(H16.11.24、東京高裁)(これはゲームソフトのタイトルの裁判)、「ELLE事件」(H20.3.19、知財高裁)(これはロックバンドのCDが、雑誌のタイトルに対する不正競争防止法違反と認められた、しかしバンドのグッズについては否定された裁判)と「VOGUE事件」(H3.6.27、大阪高裁)(これは雑誌のタイトルの裁判)等があります。

否定した裁判例は、「マクロス事件」(H17.10.27、知財高裁)(これはアニメのタイトルの裁判です。今回のケースにかなり近いようでいて、状況背景が異なり、この判決では不正競争防止法違反を否定しています。マクロスに関する裁判は他にもありますので、お間違えなきよう。)、「究極の選択事件」(H2.2.28、東京地裁)「スイングジャーナル事件」(H11.2.9、東京地裁)(これらは書籍や雑誌のタイトルの裁判)等があります。

これらの裁判は、それぞれ各事件の状況や背景等は異なっていますので、単純に不正競争防止法違反について同じように考えることはできませんが、参考にはなりますので、各判例の概略でも御理解いただきたいと思います。

なお、今回私が書いたブログのケースでは、映画という著作物タイトルの不正競争防止法違反の話で、直接には商標法は関係ないため、今回は商標法には触れません。御了承ください。

ちなみに、商標「デスノート/DEATH NOTE」は、幾つかの指定商品・指定役務に対して、商標登録されています。権利者は集英社です。
もちろん、映画のタイトルやあるいは漫画のタイトル、コンテンツタイトルとしての商標登録はされておりません。著作物タイトルとして商標登録することは、商標法制度上できません。指定商品を著作物として登録することはできません。著作物タイトルでない形であるならばできます(例えば、著名アニメ等のタイトルを、お菓子やおもちゃを指定商品にして商標登録するのは、これになります。)。



冒頭にも書きましたが、このブログ、今年はこれが最後です。来年も宜しくお願い申し上げます。
m(_ _)m