知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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刑事上の時効と民事上の時効との違いについて

前回、NHK受信料について書きました。そのとき、ネットで調べものをしている際に、時効についての説明があり、これは重要だと思いました。
時効についてちゃんと説明しておいた方がいいと思いましたので、私も書くことにしました。


「時効」という言葉は、日常生活でもよく使われます。例えば、昔友人に金を借りて、それを返すのを忘れていて、友人から数年たってから返してくれと言われた時に、「もう時効だよ(笑)」と言ったりしますよね。

つまり、ある一定の期間がたち、権利がなくなる(あるいは逆に権利が発生する)というものが、時効です。前述の場合、時効により、「借金を返済してもらえる」という、貸主の権利が時効により消滅した、ということになります。


時効には、「刑事上の時効」と「民事上の時効」とがあります。

「刑事上の時効」は、ある犯罪をおかして、一定期間の間に逮捕され処罰されなかった場合、その一定期間がたった後では、その犯罪で逮捕され処罰されることはもはやなくなる、というもので、いわゆる控訴時効とはこのようなことです。この時効は時間の経過により、ある意味「自動的に」時効となるものです。(時効の中断とか、細かいことの説明は省略します。)

「民事上の時効」は、自動的に時効が成立することはありません。あることに対する時効が5年だとして、5年たつとなにもしなくても自動的に時効になるかというと、民事上の時効はそうではないのです。例えば、借金をして、時効が成立する期間が経過して、なにもしなくても直ちに時効が成立するわけではないのです。もし、金を貸した側が、期間が経過し時効が成立した後に「貸した金を返せ」と主張してきたとして、その時に貸した側に「時効が成立した」旨を逆に主張して時効の利用を貸した側に伝え(このような、時効の制度を利用することを相手方に伝える意志表示のことを、「時効の『援用』」といいます。)なければ、民事上の時効は成立しません。その主張をせず時効を利用せずに金を返したとしても、その行為は有効です(これは、時効の黙示の放棄となります。)。さらに後になって時効の旨を伝えて返した金を戻そうと「それは時効だから無効だ。」と主張しても、もはや既に時遅し、です。その主張は認められません。


前述の友人からの借金の例で言えば、「もう時効だよ(笑)」と主張したことは、時効の利用を貸主に伝えた、「時効の援用」をした、というわけです。もちろん時効が成立する時期を経過していることが大前提ですが。

だから、前回のNHK受信料についていえば、NHKは時効期間経過分も含めた金額を請求督促することはできますし、請求督促された側は「時効の援用」を主張しない限り、その時効は認められないことになります。また、時効の援用をせず、請求された金額を支払えば、それは黙示に時効を放棄したことになり、もはや時効は存在しなかったことになります。

大事なこととして、時効の援用をすることは、すなわち「契約は成立している」ことを黙示的にはっきり認めることになります。だから、時効の援用をする前に、契約自体を否定し続けるのか、それとも契約を肯定して時効を主張するのか、どちらをとるか難しい判断がせまられるということになります。
あくまで契約していないとするならば、時効の援用はけっしてしてはいけません。契約していないと主張しつつ、万が一契約が成立しているとされてしまった時のために時効の援用をしておいて時効期間分の請求ができないようにしておくという、どちらつかずのことはできません。



なお、「時効」と類似の制度といわれているのが、いわゆる「除斥期間」です。この2つは似て非なるものですし、制度趣旨も異なります。誤解無きよう。