知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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第2回1級ブランド専門業務学科試験問題 自分学習用解説 43問目&44問目&45問目 その1 43問目 【追記、追追記有】

今回は43問目&44問目&45問目のうち、43問目です。


第20回知的財産管理技能検定   第2回1級ブランド分野学科試験の自分勉強用解説、43問目&44問目&45問目について書きます。今回は43問目です。

43問目、44問目、45問目については、以前に批判めいたことを書きました。あれはあれで、間違ったことを書いたつもりはありません。
とはいえ、現実問題として試験に合格するためには、悪問といえども、なんとか解答しなければなりません。ですので、「解答を導く」というスタンスで、以下これら3問について書いていきます(なお、43問目だけは、正解が間違っていると思うので、そういう観点で書きます。)。


43問目&44問目&45問目は、英国Intellectual Property Office(IPO、知的財産庁)における異議申立事件101495号(2013年6月20日付)についての問題です。

43問目は、下線①に関し「識別性」に関する記述として「不適切」な選択肢を選ぶ問題です(下線①は英文で、このブログの最後のほうに、私の拙い日本語訳をのせておきます。)。

特にこの43問目についてはうまく解説する自信がありません。以下は、私の仮説的説明とお考えください。

模範解答では正解がエになっています。
しかし、なぜエの選択肢の文が不適切なのか、私にはわかりません。私には、選択肢アが不適切のように思えて仕方がありません。ですから、以下は「選択肢アが不適切で正解である」という考えのもとで書いていきます。どなたか、選択肢エこそが不適切で正解であると説明できる方がいらっしゃるならば、その説明をなさって「お前は間違っている」と御指摘していただけるととても有難いです。

さて、私の説明です。

選択肢イ、ウ、エの文は、全て間違いなく「識別性」に関する記述だと思います。実際、文中にも「識別性」という言葉が出てきます。
対して、選択肢アの文は、下線①に対する反論(最後のほうで、選択肢アの英語文部分を訳してあります。くどいですが、私の拙い訳です。)なのですが、私には「識別性」に関して反論しているとはとうてい思えません。この反論の英文の’its essential function as an indication of trade origin'の部分は、直訳すれば「取引の起源の表示としての、その本質的機能」となると思いますが、私はこれは「出所表示機能」のことではないかと考えています。
ということはつまり、「『識別性』に欠ける」という異議申立てに対し、「『出所表示機能』を果たしている」という反論をNestleはしたことになる、と考えています。

私にはこれがどことなく「おかしな」「ズレた」議論になっていると思えて仕方がありません。「出所表示機能」は商標の持つ機能ですが、「識別性」とはまた別の要素だと思っています。「出所表示機能」が一番本質的機能で、そこから導き出される機能が「識別性」、つまり「自他商品識別機能」ではないかと思いますが、機能としてはそれぞれ別のものであると私は考えます。「識別性」について反論するなら、例えば「『自他商品識別機能』がある」ことを主張すべきと、私は考えますが、いかがでしょうか(人によっては、出所表示機能と自他商品識別機能を、一緒に考える方もいらっしゃると思います。そのような方には、おそらく選択肢アの文は問題ないように読むことができると思いますが、私にはできませんでした。)。

繰り返しますが、「自他商品識別機能」と「出所表示機能」は別物だと考えます。前者は自者と他者の関係についての機能ですが、後者は自らの出所表示の機能であり、他者との関係はこの機能では考慮されません。ですから、選択肢アが不適切で間違いだと私は考えます。なお、これについては、日本の事例ですが、ホンダカブ立体商標登録事例や、裁判例エルメスバッグ事件が、参考になるかと思います。

おそらく、事実として、Nestleはこの選択肢の文のように反論したに違いないでしょう。だからといって、反論したという事実と、その反論の内容が正しく「適切」であるかどうかは、また別次元の問題なのではないでしょうか。事実として正しくても、内容として「適切」でないと考えるべきならば、やはり「不適切」な選択肢であることを意味すると思います。

もっといえば、選択肢文の事実の真偽については、その選択肢についての知識がほとんどなく、また別途説明文等にこれが事実かどうか判断できるような記述がない以上、事実の正誤の判断はできかねるでしょう。
この問題は、受験者が必ず知っておくべき知識ではなく、問われたときに正しく判断できればいいことであり、だから問題文にはその判断に必要な説明が必要、と私は考えます。
その説明がないなら、「『事実について書かれている』選択肢はおそらく『適切』である。」と判断せざるをえないと思いますが、でもそうでないのであるならば、適切・不適切の判断を何をもとにすればいいのでしょうか。その意味で、この問題は良くないと言えると思います。
なお、選択肢イ、ウについては、「識別性」について書かれてはいますが、説明文等にこの文の内容が正しいかどうか判断できるような記述はなく、また私には知識がないので、この文の内容が正しいかどうかは判断しかねます。
特に選択肢ウは(選択肢アもそうですが)、選択肢の文の内容が、Nestleや英国IPOが行った「事実」として正しいかどうか、私自者知識としてちゃんと持っていませんし、また問題文や説明文からは判断できません。少なくとも43問目は「不適切」な選択肢を答えさせる問題ですから、このような文を、選択肢にだしていいのか、私には疑問に思います。受験者を意味なく惑わせるだけではないでしょうか。判断をさせるなら、それだけの判断材料を、選択肢外の説明文等にちゃんと用意しておくべきかと私は思います。
また、選択肢エは、英国商標法第3条⑴但書の部分に、そのままの記載があります。まさに「識別性」についての但書です。ですから、なぜこの選択肢エの文が「識別性」に関して不適切なのか、私には疑問です。

よって、私は、選択肢アこそが「不適切」で正解だと思います。
また、以上のことから、43問目は「悪問」を通りこした「『超』悪問」だと私は思います。
まさかもしかすると、出題者は、「不適切」を「適切」と勘違いしたのでしょうか。だとしても、とんでないことです。


あらためて書きますが、もし、どなたか43問目を私より正しく正確に上手く解説できる方がいらしたら、ぜひぜひ本当にしていただきたいです。
いっそのこと、この問題の作成者には、見解を述べられた上で解説をしていただきたいものです。



最後に訳をいくつか書いておきます。私の訳ですのでうまくはありません(笑)。また訳の正しさは保証できません。悪しからず。

下線①
「当該商標は、商標としての識別性に欠け、売買において商品そのものの特徴をもっぱら表示しているにすぎない。その商品の商標登録を求められているが、その商品は、確定的かつ善意の売買の実施における慣習的な形状のものにすぎない。」

43問目選択肢アの英文部分
「出願された形状は当該商品分野での基準や慣習からはあきらかに離れているものであり、従って本形状は商品の出所表示という商標の本質的機能を果たし得る。」

英国商標法第3条⑴但書
「但し、もし商標の登録出願日前に当該商標が使用された結果実際に識別力を備えたのであるならば、上記b、c、dの各項の理由で当該商標の登録が拒絶されることはない。」

上記bの部分
「b.識別性に欠ける商標」


【追記】
欧米では、当該商標の使用により実質的に識別力が備わった(セカンダリーミーニングが備わった)としてもなお、「立体」商標の場合は登録が認められない規定があるそうです。
そうなると、やはりエが正解の可能性のありますね。
本当に誰か解説できる方がいらしたら、解説してもらいたいです。


【さらに追記】
前述の追記で、「欧米では、当該商標の使用により実質的に識別力が備わった(セカンダリーミーニングが備わった)としてもなお、『立体』商標の場合は登録が認められない規定があるそうです。」と書きましたが、これは日本の商標法で言えば、第4条第1項18号のようなものでしょうか。
そう考えれば、選択肢エが「不適切」で「正解」なのかもしれませんね。
でも、これは英国の商標法条文を知らないと回答できないでしょう。日本に同様の規定があるから、英国もそうだろうなんて考えられません。だから、知らなければ解けないということになりますが、英国商標法条文なんて知ってなければいけないものだとは思えません。欧州共同体商標ならともかく。


(次回に続きます)