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知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

音商標と音楽著作物②

①の続きです。


では、音商標と音楽著作物が抵触する場合を考察したいと思います。あくまで「抵触する場合についての考察」です。前回に書いた抵触しない場合は、今回の考察には関係ありません。


わかりやすいのは、音楽著作物が先に完成していて「先に公表されて」いて、その後に同一類似の音商標が他者により出願され登録された場合です。
この場合、その著作物が無名で知られていない場合を除いて、そもそも審査基準上まず登録されることはありえません。
もし登録された場合は、その商標登録を無効取消にすることはできませんが、商標法第29条に基づいて商標の使用をできなくさせることはできます。ただ、裁判をおこす必要はあるでしょうし、音楽著作物が先に完成していて先に公表されている、このことを証明して裁判で認めてもらわなければならないでしょう。

次に音楽著作物が先に完成しているが「未公表」の場合で、その著作物の後に同一類似の音商標が他者により出願され登録された場合です。
この場合は、おそらく音商標はこのまま使用し続けることができると思います。
というのは、音楽著作物が未公表であるのがポイントで、音商標は音楽著作物のことを知らずに商標出願し登録されたと考えられますから、商標法第29条違反になるかどうかの判断が微妙で、おそらく第29条違反にはならないと考えられます。たまたまの偶然の一致のために、商標が使用できなくなるのは正直たまりません。また、著作物同士の場合は、お互いを知らず偶然似てしまい一致した場合は、両著作物が認められますから、そのことをふまえて考えれば、第29条違反にならないと考えるのが妥当と思います。


では逆の場合、音商標が先に登録出願され、その後にそれと同一類似の他者による音楽著作物が公表された場合はどうなるでしょうか。
著作権法上、他の権利との抵触についての調整規定はありません。そうなると、少なくとも法律上、問題はなく著作権は認められる、ということになると解釈することはできます。

ですが、以下の場合はどうなのでしょうか?
ある企業Aが、あるメロディーを音商標Xとして登録しました。TVCMで使用され、その周知性は非常に高いといえます。そのメロディーを聴いたら、企業A乃至は企業Aの商品を連想してしまうくらいに。
さて、その音商標Xのメロディーを聴いたBは、インスパイアされ、そのメロディーと似たようなメロディーをサビの一部にした、音楽著作物Yを完成させました。そして、その音楽著作物Yは映画Cの主題歌として採用されました。
この場合、Bがつくった音楽著作物Yは、企業Aの音商標Xと抵触していて侵害したといえるのでしょうか。

私は、Bがつくった音楽著作物Yのサビの一部のメロディーが、企業Aの音商標Xと、音楽著作物Yを聴けば音商標Xを連想させるくらいに極めて似ているのであり、また音商標Xの周知性がそれなりにあるならば、この音楽著作物Yは、音商標Xに抵触していて、商標権を侵害している、と考えてよいと思います。
かつていわゆるサンプリングが著作権侵害とされたケースがいくつかありましたが、それと同様に考えることができると思います(※注1)。先行するサンプリングソースの著作物が、音商標に置き換わったと考えれば、御理解いただけると思います。もっとも、サンプリングによる著作権侵害は海外での話で、日本においては、裁判例は存在しないらしく、問題になった実例すらも正直私は聞いたことがありません。その点で私の論理は確かにかなり弱いです。

あと、別の考え方として、音楽メロディー形態の音商標も、その原始状態、最初期においては、音楽著作物であり、その後、商標として使用したり、商標登録したりすることで、音商標になるわけです。この考え方だと、著作物同士の抵触として考えることができ、よって権利侵害であると考えることができます。



これらのことから、未公表著作物の場合を除き、音商標と音楽著作物の抵触の場合は、商標であれ著作物であれ、先行したものの権利が基本的に優先されると考えていいのではないか、と私は思います。今後、事例などが蓄積すれば、そうということにはならないケースも出てくるかもしれませんが。




※注1
(狭義の)著作権だけでなく、(例えば、実演家やレコード製作者の権利としての)著作隣接権まで含めて考えると話が複雑になりそうなので、今回はシンプルにわざとそこまでは考えませんでした。あしからず。


※追記1
音商標でメロディーを奏でる楽器が商標登録した時のものと異なる場合は、それは登録商標の使用とは認められないらしいです。
例えば、登録時はフルートでのメロディーラインなのに、実際の商標使用の際はバイオリンでのメロディーラインである場合には、これは登録された音商標の使用とはならない、ということだそうです。
その意味で、音商標の出願は慎重になされた方がいいようです。ちゃんと商標を使用する際の楽器も考えて、その楽器を願書にちゃんと明記して出願し、実際の商標使用においてはその楽器ですることが、一番確実でしょう。
もし出願時に使用楽器について願書に明記されていない場合は、どんな楽器での商標使用も認められるわけではなく、この場合音商標サンプルでの楽器のみでの使用が認められることになるらしいです。

願書に使用楽器(例えばフルート)が明記されていて、それとは異なる楽器(例えばバイオリン)の音の商標サンプルだという場合では、サンプルの音をフルートの音にする補正は認められるようですが、例えば使用楽器が願書に明記されていない場合で、フルートの音での商標サンプルを願書とともに提出したが、後で実際に使用する楽器はこちらであるなどとバイオリンの音の商標サンプルに変更した場合は、要旨変更となり、よって登録が認められないらしいです。音商標の商標も要旨変更には気をつけましょう。
なお、登録はバイオリンの音だったのを実際の商標使用ではビオラの音にするのは問題ないそうです。

今回の商標法改正により、審査基準も改訂されました。他にもいろいろ新しいあるいは変更になった審査基準があります。新しいタイプの商標は音だけではありませんから。
特許庁のホームページ上では審査基準が公開されているようです。一度ちゃんと勉強しておかないと。おそらく、来年2016年の知的財産管理技能検定1級ブランド分野試験では、間違いなく新しいタイプの商標、及びこれにより変わったあるいは新たに加わった審査基準、これらについて出題してくるでしょうから。
まだこの間の試験の合否はでていませんが、おそらくだめでしょうから、今のうちから、来年に向けて備えることにします。