知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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商標の「指定商品・指定役務」 「専用権」と「禁止権」の狭間

商標には、「専用権」「禁止権」があります。

いわば、「専用権」「登録した商標と『同一』の商標を、その登録内容範囲に限り(登録内容と『同一』の指定商品・指定役務の範囲に限り)、その商標を独占的に使用できる」権利のことであり、「禁止権」とは、「第三者が、登録商標『同一類似』の標章を『同一類似』の指定商品・指定役務の範囲で使用するのを禁止できる」権利のことです。

 

ただ、この「専用権」「禁止権」の狭間に、微妙な領域が存在する、と私は思っています。「同一」「類似」の狭間の領域、とでもなりましょうか。

 

例えば、商標自体についていえば、「同一」「完全同一」のみならず「社会通念上同一とみなすことができる」ものまで「同一」とされるのは、皆様御承知だと思います。これはこれで、「同一」「類似」の狭間の領域と言えますが、今回こちらについては考えません。

今回考えるのは、「指定商品・指定役務」において、です。形式的には「類似」範囲つまり「禁止権」の範囲なのですが実質的には「同一とはいえないが専用できてしまう」、つまり実質的に「専用権」的な範囲である言っていい領域があると、私は常々考えています。

 

 

具体的に例を書きます。ある企業Aが、商標XYZを、指定商品を第25類「野球スパイク」として、商標登録しました。そして、その企業Aは、「野球スパイク」のみならず「サッカースパイク」についてもこの商標XYZを使って製造販売していたとします。

「野球スパイク」は「専用権」の範囲ですから、問題ありませんが「サッカースパイク」は「禁止権」の範囲です。別に権利者は「禁止権」の範囲での登録商標の使用を禁じられているわけではありませんが、「サッカースパイク」は「禁止権」の範囲内であるということには注意を払う必要があります。「禁止権」の範囲で「のみ」の登録商標の使用は、後述の括弧書きにあるように、不使用取消となる可能性があるからです。

話を進めます。さて、第三者が商標XYZを、「サッカースパイク」を指定商品として、商標登録出願をしたとします。しかし、そうしたところで、登録されることはけっしてありません。なぜなら、「野球スパイク」も「サッカースパイク」も「類似群コード」24C01でお互い類似関係であり、企業Aの商標XYZの禁止権の範囲内だからです。拒絶されてしまいます。また、第三者が商標XYZを「サッカースパイク」に使用しても、企業Aは禁止権を行使して、その第三者の商標XYZの使用をやめさせることができます。

ということは、第三者の出願が登録されることがないそして第三者が使用できない以上、実際問題として、企業Aがこの商標を「サッカースパイク」に「も」使用しても実際にはなんの問題がない(おきない)と考えていいのではないでしょうか(あくまでこれは、企業Aが「野球スパイク」に登録商標を使用していて、さらに「サッカースパイク」にも使用するなら、という話です。もし企業Aが「サッカースパイク」に「しか」この登録商標を使用していなければ、それは登録商標の不使用となり、審判がおこされれば登録を取り消される可能性があります。)。

 

 

商標の出願においては、その願書に「類区分」「指定商品・指定役務」は必ず明記されます。類区分」の数により出願料が変わります(逆に言えば「類区分」の数によって出願料が決まります。)から、「類区分」の明記は大事です。また、「指定商品・指定役務」ついては、権利範囲の確定のため、その明記は重要です。

 

ですが「類似群コード」は願書に記入しません。それは、「類似群コード」が、特許庁が審査の際に便宜的に独自に使用しているものであり、出願商標について特許庁が勝手に付与するコードだからです

とある出願商標について、先願商標の商標自体が「同一類似」でありそしてその先願商標の「指定商品・指定役務」に対して同じ「類似群コード」が出願商標にも付与されていれば、出願商標の「指定商品・指定役務」「同一又は類似」と判断され、特許庁はこの出願商標を拒絶査定します。このように、特許庁が審査の効率化のために用いるものです。

類似群コード」が異なればその「指定商品・指定役務」「同一又は類似ではなく(なお、「類似群コード」が異なっていても「指定商品・指定役務」「類似」と判断される場合があります。いわゆる「備考類似」です。)、また、逆に「類似群コード」が同じならばその「指定商品・指定役務」は原則「類似」であると推定される(原則ですから、例外もあります。「指定商品」は異なっていても「類似群コード」が同じのため、審査では「類似」と判断され拒絶されたが、その後の審判で覆り「非類似」とされたケースがあります。しかし、それは前述の「備考類似」の場合よりもはるかに少ないようです。)、ということになります。

ちなみに、この「類似群コード」異なる「類区分」異なる「指定商品・指定役務」でも、同じ「類似群コード」が付与されれば、「類似」の関係となります(いわゆる「他区分間類似」。)。

また、商標の「指定商品・指定役務」によっては、「類似群コード」が複数付与されています。

 

 

 

前述のとおり、「指定商品・指定役務」の範囲は、出願の際には言葉で表現され(「類似群コード」は願書に使われません。)、また登録後の権利範囲も言葉で表現されているとおりとなります。

だから、前述の例の企業Aのとおりのようなことがおこりえるわけなのです。

 

 

もっとも、この曖昧な領域については、私はこのままでいいと思ってます。それは、現実的に誰も困ってはいないようだからです。実際に誰にも問題がないなら、厳密な法の整合性を求めるためだけに法改正するのは、はっきりいって何の意味もない時間と労力の無駄なことだと、私は考えます。

 

では、何で今回のようなブログを書いたのかと言いますと、たんに私がこのような細かいところまで気にしてしまったから(笑)、それだけです。