NexToneの約款を読んで気になったこと
先月8月の19日及び26日の2回にわたって、JASRACの音楽著作権管理「信託」契約について書きました。その際にJASRACの約款を読んでみました。
ならばNexToneの約款はどうなっているのだろうか、とその時思い、後日こちらも読んでみました。
えっ?NexTone?
簡単に説明しますと、NexToneは、EライセンスとJRCがあわさってできたJASRACとは別の音楽著作権管理事業者で、「株式会社」です。
詳しいことは検索するなどして調べてみてください。
で、約款を読んでみると、気になることがありました。
表紙には、音楽著作権の「管理『委託』契約約款」とあります。
「信託」契約ではなさそうな感じです。なので、約款の条項に目を通してみますと、やはり「権利の『移転』」についての記載はありません。「信託」契約ではない感じが強くなってきました。
さらに確認しますと、どうやら「委任」契約のようです。NexToneの約款そのものには「委任」とは書かれてません(約款には「委託」と書かれているだけです。正確には「委任」と「委託」とは異なります。「委任」は法律用語です。)。ただ、NexToneのサイト別のページには「権利者とNexToneの『委任』」という記載がありました。
これらのことから、おそらく、NexToneの場合は、「信託」契約ではなく、「委任」契約のようです。
(下記の※に記載の質問を、eメールにて直接NexToneに送り、確認をしましたところ、やはり「委任」のようです。)
では、「信託」契約と「委任」契約、どう違うのでしょうか?
眞下司法書士事務所のサイトにある、「信託と委任の違い」の説明のページ
信託の基礎②(信託と委任の違い) - 司法書士ましたのブログ - 眞下司法書士事務所
によりますと、3つの違いがあるそうです。「所有権」と「運用方法」と「辞任」についてです。
①「信託」の場合著作権は「移転」しますが、「委任」の場合は権利に著作権は残ったままです。(所有権)
②「信託」の場合は「信託」された側が「管理・処分」について権利者に指示を仰ぐことなく独自判断で行うことができます(もっとも、それは、「権利者から『移転や譲渡』をされた財産権について、権利者の一定の目的を達成するために」、「管理・処分」を行わなければなりません。)。「委任」の場合は権利者の指示の元に行う必要があり、勝手に「管理・処分」を行うことはできません。(運用方法)
③「信託」の場合は受託者は「信託」契約を自分の意志だけで辞任することはできませんが、「委任」の場合は受託者は「委任」契約を自分の意思だけで辞任することができます。(辞任)
③はおいときまして、①②は重要な点です。
「信託」の場合は、著作権が権利者から「移転」されるので、受託者が著作権を所有することなり、よって受託者は権利行使ができます。ですから、JASRACは著作権侵害に対してJASRAC自身で権利行使ができます。
それに対して、「委任」の場合は、権利者に著作権が残ったまま、権利者が著作権を所有しています。ですから、著作権者ではないNexToneは著作権侵害に対して自ら権利行使はできず、この場合権利者自身が権利行使をしなければならなくなります。NexToneは、あくまで権利者の意志に基づく代理行為しかできず、主体的に侵害行為に対応することはできない、と思います。
この違いは、権利者にとってはとてもとても大事です。
※NexToneへの質問の文
以下のとおりの質問をしてみました。原文のままです。
株式会社NexTone様
お忙しいところ誠に申し訳ございません。
質問がいくつかございますので、お答えいただければ幸いです。
①NexTone様との著作権管理「委託」契約ですが、「委託」ということは、「委任」契約であり、「信託」契約ではない、ということでしょうか。
②そうなりますと、JASRACの「信託」契約のように著作権の移転はおこらず、著作権は著作者等契約の委任者に留保されたまま、ということでしょうか。
③また、著作権侵害があった場合には、直接的な侵害行為に対すり権利行使は、委任者自身がしなければならない、ということでしょうか。第三者が無断で勝手に自分の著作物たる音楽作品を利用していても、それに対してはNexTone様はJASRACのように著作権料の徴収はせず、委任者に連絡する程度のことしかしないのでしょうか。
以上、3点質問いたします。
お手数をおかけいたしますが、よろしくお願い申しあげます。