知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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あらためて《音楽教育を守る会 vs JASRAC》 第3回 未来の音楽家は減少するか?

7月4日17時近くにYahooニュースが配信した神奈川新聞の記事を、たまたま目にしたのですが。

 

その中の章見だしにこう書いてありました。

《 ■「未来の音楽家減少」を懸念 》

と。

 

また、この記事の中でこう書かれていました。

『演奏することができる人を増やすことが目的の音楽教室から、著作権使用料を徴収することは、未来の音楽家を減少させることにつながる』

これは「音楽教育を守る会」側の弁護士の方の発言です。

 

今回の裁判の結果、著作権料徴収することになったとして、たかだかこのことで未来の音楽家が減少するとは、私には到底考えられません

音楽教室から著作権料が徴収されるのをさけるため、裁判に勝つために、「音楽教育を守る会」側の弁護士の方は意図的にこのような発言をされたのではないか、と勘ぐってしまいました。世間をあおりまた共感を得ることを目的として、こういう発言をわざとしたのではないか、と私には思えてなりません。

 

だいたい、著作権料が徴収されることが、何故音楽家の減少を招くのか?これらがどうつながるのか、そのロジックが私には全くわかりません

 

音楽教室から著作権料を徴収されるところで、これまでと変わらず音楽家を目指す人は音楽家を目指すと思います。

また、著作権料を徴収することは作曲家にとって(作曲家に限られ演奏のみの方にはあてはまりませんが)、著作権収入がより増える話、収入安定につながる話です。音楽家の中でも、作曲家を目指す人は、もしかしたら増えるのではないでしょうか?私はそう思います。

 

まあ、ここでおっしゃっている「音楽家」とは、プロの音楽家、職業音楽家のことだけではないようです。むしろ、趣味で楽器演奏をされているようなアマチュアの方、こちらを主と考えていると思います。おそらくそうでしょう。だって「音楽家の減少」=「楽器の売上の減少」につながりますから。楽器業界としては死活問題です。

 

でも、ですね、この著作権料、べらぼうな金額とは思えません。例えば、月謝が1万円として、著作権料がその5%だとしたら(実際はこれより低いはずです)、一人当たりの著作権料負担は一月あたり500円、年間で6000円。もっとも、音楽教室著作権料を支払うことになったら、音楽教室は、著作権料以外に、手数料名目でさらに上乗せしてくるかもしれませんが。

この程度の負担が増えるくらいで、音楽教室に行くのをあきらめるような人は、著作権料関係なく、最初から音楽教室にはいかないと思います。この程度で、「演奏ができるようになりたい」、その情熱がなくなるのであれば、所詮その程度の人です。そのような人のために、著作(権)者(けっしてJASRACではありません)のその権利をないがしろにすることこそむしろおかしいのではないでしょうか?

 

 

あと、この記事の中で、もう1つ気になったことがあります。

この「音楽教育を守る会」側の弁護士の方がおっしゃるには、現行著作権法(※)の立法の際、「学校における音楽教育」と「社会における音楽教育」についての議論があったそうです。私は知りませんでしたが、この時にこのような議論がされていたのは、素晴らしいことと思います。記事によると、この弁護士いわく、『幼少期の音楽教育経験が演奏家や教師としての将来につながるとみた当時の議論では、学校だけでなく社会教育も含めて「演奏権」から外すことを決めた』とのことのようです。

 

なるほど、そうなのですか。

 

ただ、それは現行著作権法に明文的に反映されたのでしょうか?もしかしたら、この当時は反映されていたのかもしれません。しかし、それから年月がたち、いろいろ改正がなされた現在の著作権法からは、私は条文をこのように読むことは到底できませんし、条文に反映されているとは全く思えません。

いくら立法の歴史的過程がそうだとしても、それを現在持ち出したところで、現在の著作権法からそのようには理解できません。

ならば、この主張についても、疑問をいだかざるを得ません。

 

もっとも、この弁護士の方が、「根本的に現在の著作権法自体が間違っている」とでもおっしゃるのならば、それはわからなくもありません。

しかし、そんな著作権法そのものを否定するロジックがはたして裁判で認められるのでしょうか?

 

私には疑問だらけです。

 

 

 

(※)昭和45年(1970年)5月6日制定