知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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カラオケ歌唱動画とYouTube 著作権法制度的観点 その2

(その1の続きです)

 

著作権法第30条の2」は、写真等(動画、静止画)の撮影などにおける著作物の写り込み(音声著作物なら入り込みとでもいえばいいでしょうか)に関する著作権法の規定条項です。

 

今回の裁判では、被告は、歌っているところの動画の撮影がメインであり、自分がカラオケしているところをYouTubeにアップして見せたかったようで、カラオケの音声やモニターの映像をアップすることを目的としていない、つまり侵害の意図はない、というようなことを主張しています。

 

実は私も最初この意見に同意してしまいました。しかし、よくよく考えてみると、見ず知らずの人がただカラオケを歌っているだけの動画を、普通見たくなりますでしょうか。私ならなりません。つまり、おそらくこの被告の方は、注目をあびるために、「◯◯◯◯◯◯(曲名)を歌って見た」というタイトル、ハッシュタグ等にでもして、動画をアップしたのではないか、つまり、視聴数をあげることを目的とするために、タイトル、ハッシュタグ等に◯◯◯◯◯◯(曲名)を書いたのではないか、と考えております。これは、例え被告に「著作隣接権侵害」の意識はなくても、◯◯◯◯◯◯(曲名)を書くことで、注目を集め視聴数をあげようとしていたと考えられますから、意図的に「◯◯◯◯◯◯(曲名)を歌っている映像」を(もちろん◯◯◯◯◯◯(曲名)であることがわかるような形で)アップしたに違いないわけで、これならば立派に「著作隣接権侵害」になると私は考えます。そして、実際、裁判では侵害したと判断されたわけです。今となっては、削除されていますから、アップされた動画を確認することはできませんが。

 

著作権法第30条の2」の第1項には、この条項の適用がされるための3要件として、①「分離困難性」②「軽微性」③「利益不侵害性」があげられています。この3要件にあてはまるならば、いわゆる「写り込み(入り込み)」とされ、侵害は問われません。また、第2項では、写り込んだ(入り込んだ)画像のネットへのアップについても規定されています。

 

私は、今回は、③のみが適用となりえるケースで、①と②は適用とはならないのではないかと考えます。

今回はカラオケ歌唱動画です。そうである以上、いくら歌っている人を中心に撮影しても多少なりのカラオケ音源とモニター画面の入り込み写り込みは十分ありえることで、その点から①の「分離困難性」はあり、またあくまで歌っている人がメインの撮影なのですから②の「軽微性」もあてはまるのではないか、と「一見」考えられそうです。

しかし、しかしです。もし、YouTubeにアップする際、注目を集め視聴数をあげようと考え、「◯◯◯◯◯◯(曲名)を歌って見た」というタイトル、ハッシュタグにでもしてアップしたとしたら、どうでしょう。それは、「意図的に」◯◯◯◯◯◯(曲名)を歌っていた、と言えるのではないでしょうか。わざと、◯◯◯◯◯◯(曲名)を歌っているとわかるように撮影してアップしたのではないでしょうか。「意図的に」そうしているのであるならば、①の適用が認められるはずなどなく、②の軽微性ももはやないと言ってしまっていいと思います。

 

例え侵害の意識、意図はなくとも、「◯◯◯◯◯◯(曲名)を歌って見た」というタイトル、ハッシュタグでアップしたならば、それは事実上侵害行為を意図的にしたと言っていいと思います著作権法制度上、立派な著作隣接権に対する侵害行為が成立する、と私は考えます。

 

前述のとおり、アップされた動画が削除されている現在において、確認のしようがありませんが。

 

 

(その3に続きます)