解説を終えて考えたこと
今回の第26回知的財産管理技能検定(4回目)1級ブランド専門業務学科試験、自分用解説を一通り書いてみましたが、ふりかえると、判例からみの出題が増えた気がします。
17問目、24問目、25問目、26問目、27問目、29問目、都合6つの問題において、なんらかの形で判例がからんで出題されていると考えられます。
そのパターンは、まず大きく2つ、
①判例の存在を問題文又は選択肢の文におもてだって書いてはいないが、問題文又は選択肢の文のベースとして判例が参考にされていると考えられる設問(24問目、26問目、27問目)、
②問題文あるいは選択肢の文で、はっきり判例名が書かれている設問(17問目、25問目、29問目)、
にわけられます。
また、さらにサブ的わけ方として、
❶1つの問題が1つの参考判例にフォーカスされている設問(24問目、25問目)、
❷各選択肢ごとにそれぞれ参考判例がある設問(26問目、27問目)、
❸選択肢の中の1つ又は2つに参考判例が明記されている設問(17問目、29問目)、
と分類することができます。
選択肢ごとに見てみますと、
⑴17問目は、②&❸です。17問目自体は判例問題といえないかもしれませんが、選択肢のイとエで、「TRIPP TRAPP事件(vsカトージ)」についての記載があります。なお、この問題は、意匠と著作権の問題です。
⑵24問目は、①&❶です。判例名こそ書かれていませんが、わかる方には「フレッドペリー事件」を(選択肢イについては「バイアグラ錠剤事件」も)参考にした問題ではないかと思わせる問題です。24問目は1つの判例にフォーカスされた問題です。なお、29問目の選択肢アが24問目をとくヒントになっています。
⑶25問目は、②&❶です。「IKEA商標事件」をズバリ出題しています。25問目は1つの判例にフォーカスした出題です。
⑷26問目は、①&❷です。判例名は選択肢の文には書かれていませんが、それぞれの選択肢にはベースとなる判例があると思われ、選択肢ア、イは「メープルシロップ事件」、選択肢ウは「小僧寿し事件」、選択肢エは「花粉のどあめ事件」を参考にした問題と思われます。
⑸27問目は、①&❷です。27問目は、不正競争防止法の問題です。判例名は選択肢の文には書かれていませんが、それぞれの選択肢にはベースとなる判例があると思われます。選択肢アは「くろず事件」、イは「赤木屋プレイガイド事件」や「つゆの素事件」、選択肢ウは「花柳流舞踏事件」や「山葉楽器事件」、選択肢エは「フジマンバルブ事件」を参考にした問題と思われます。
⑹29問目は、②&❸です。29問目自体は判例問題といえないかもしれませんが、選択肢アにて、「フレッドペリー事件」について、詳しく書かれています。前述のとおり、この選択肢アの説明が24問目を解くためのヒントになっています。
こうやってみると、❸のような、判例問題とはいえない問題の選択肢の文1つ(あるいは2つ)に判例名あるいはその内容を明記するパターンでの出題が増えたと思います。
また、今に始まったことではないですが、⑴17問目の問題が意匠と著作権の問題、⑸27問目の問題が不正競争防止法の問題ですので、これらから、商標の判例だけでなく、意匠、著作権、不正競争防止法の判例まで、それなりに広くカバーしておく必要があるといえると思います。
判例問題は、多くは、別に判例を知らなくてもそれなりに解答ができる程度の問題かもしれません。
しかし、判例を知っていれば、比較的簡単に解けますから、問題を解く時間の節約になりますし、なにより根拠があるわけですから自信をもって答えることができます。
ですから、商標のみならず、意匠、不正競争防止法、著作権の関連部分まで、ある程度の判例はおさえておいた方がいいのではないか、と思います。
とはいえ、全ての判例を知ることなど所詮無理な話です。最低限重要な判例は知っておき、その上で覚えなくても構わないのでできるだけ多くの判例に目を通しふれておくことが大事だと思います。
海外まで手を広げるときりがないので、私は海外判例に対しては特になにもしていません。ただ、なんらかの機会がある度にその範囲においてチェックは必ずするようにしています。
個人的には、今後は国内、海外問わず判例をからめた問題がより増えていくような気がします。