知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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【再び解説】第20回1級ブランド専門業務学科試験問題 自分学習用解説 29問目(特に選択肢アを手直ししました)

おととしの4月あたりに、第20回知的財産管理技能検定1級ブランド専門業務学科試験の自分勉強用解説、29問目について書きました。

 

今回、自分が書いた過去問の解説を見直してみたところ、この問題の選択肢アが、あまり上手い解説ではない、と思いました。

 

そこで、あらためて第20回知的財産管理技能検定1級ブランド専門業務学科試験の29問目(特に選択肢ア)について解説をし直したいと思います。

 


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29問目は、水際取締りにおけるTRIPS協定の規定に関する問題で、「適切」な文章内容の選択肢を選ぶ問題です。

TRIPS協定の問題、というよりは、日米欧の水際取締りについての比較の問題、というところでしょうか。

 

29問目は、TRIPS協定を知らなくても解ける問題です。それは、説明文のところに日米欧の水際取締りの比較表があり、この表が問題を解くヒントになるからです。

ただし、選択肢アについてだけは、この表が頭を混乱させることになります。

また、選択肢イについては、この表は全くヒントになりません。

選択肢アは間違いです。

選択肢アを読みますと、「米国において、商標権侵害物品が輸入されていると思われる事実があったとき、権利者は国際貿易委員会(ITC)に差止申立てをすることになる。」とあります。そして表を見ますと、米国の「暫定的通関停止を決定する権限ある当局」(知的財産権侵害物品の輸入通関を停止(輸入差止め)させるべく権利者の申請を受ける当局)の欄に、「国際貿易委員会(ITC)」とあります。そうなりますと、「選択肢アは正しい」と考えてしまいます。

確かに申立ては「国際貿易委員会(ITC)」に対して行います。しかし、連邦登録した商標の場合には、税関にその旨を申請することで、税関にて水際で商標権侵害物品の輸入を差止めることができます。その点からいえば、選択肢アの「権利者は国際貿易委員会(ITC)に差止申立てをすることになる。」の部分は間違い(といいますか、正しくない、不適切)といえます。なお、未連邦登録商標の場合はこれはできませんので、国際貿易委員会(ITC)に差止申立てをしなければなりません。

 

(以下は、以前の解説とほぼ同じです。)

 

選択肢イは間違いです。

日本では、権利者も輸入者も税関長の決定に不服がある場合、その不服の申立てができる手続が整備されています。これは前述のとおり表からはわかりませんが、税関制度について多少勉強していれば、わかる問題です。


選択肢ウは正しいです。

表によると、税関における全ての決定手続の権限は、日本では税関長にあります。そのため、日本では迅速な取締りができる、とされています。


選択肢エは間違いです。

EUの場合、表によれば、(各国の)税関長には暫定的通関停止の決定を行う権限があり本案についての最終判断の決定を行う権限は(各国の)裁判所にあります。これは、EUの規則で決まっているようです。これはつまり、裁判所と税関長とのそれぞれの権限は別物で、裁判所は税関長の暫定的通関停止の判断理由を尊重しなければならないわけではなく、独立して「慎重な判断」をしているようです。なお、別途の手続きにより、裁判所の判断、認定手続きを待たずに、最終的に税関長による廃棄等の処分ができる場合があるようです。何にせよ、日本よりは迅速ではないらしいです。

 

 

日本は迅速さを重んじて、欧州は慎重な判断を重んじて、米国は両者の中間的な感じ、というところでしょうか。

 


よって、選択肢ウが「適切」で正解です。