【緊急】某教科書のエレン先生の絵の一件について 《追記有》
某社の某英語教科書のキャラクター、エレン先生の絵の「使用」(正しくは「利用」でしょう。著作権法制度上「使用」には許諾は必要ありませんから。「使用」と「利用」が混同されていると思います。これまでにその話は書いてきたので、ここではそのことについての説明はしません。)の許諾について、その某社か教科書協会に問い合わせたら、拒絶されてしまった一件。このことが、一部のネット界隈をにぎわしているらしいです。
まず、事実として書きますと、
このキャラクターの絵の著作者と原著作権者は、この絵を描いた方です。この方が某社の社員ならば職務著作と考えることもできますが、この方は外部の方だと思われますので、やはりこの絵を描いた方が著作者で原著作権者と考えるべきです。
そして、この方と某社との間でどういう契約がなされているかわかりませんが、もし両者間で権利譲渡契約がなされたならば、某社に著作権が移った可能性もあります。その場合、著作者は変わらず絵を描いた方ですから著作者人格権はそのまま著作者に残りますが、譲渡契約において著作者人格権の不行使特約を交わしていると考えられます。
簡単にまとめますと、絵の権利(原著作権及び著作者人格権)は著作者たる絵を描いた方にあります。また某社に著作権が譲渡されたなら、著作権が移り、著作権者は某社となります。この場合、著作者人格権は著作者に残ったままです。
さて、これを前提として書いていきます。
そして、ここからが大事なことです。
違法の侵害行為でも侵害された側がその侵害を主張しない限りは民事上問題にはなりません。また、刑事上でも、著作権法違反が親告罪である以上、被害者(著作権被侵害者)側が警察に訴えない限りは、警察は取り締まってくれません。
まとめると、①許諾なき著作権の「利用」はれっきとした違法行為である、②「利用」のため許諾を得ようとするのは当然のこと、③例外として「使用」行為を含む一部の行為は違反ではない、④違法な侵害行為でも被侵害側がその侵害を主張しない限りは民事上問題にならない、⑤刑事上は著作権法違反は親告罪なので被害者(著作権被侵害者)側が訴えない限りは警察は動かない、ということです。
以上のことからわかっていただきたいことは、著作権法制度上、「行為としては間違いなく違法」だが「民事的も刑事的にも問題とはならない」行為領域がある、ということです。
エレン先生の絵を許諾なく「利用」すれば、それは間違いなく著作権法制度違反行為です。だから、「利用」するにあたり許諾を得ようとすることは当たり前です。
で、実はここからが今回のブログで一番主張したいことです。
「黙認」を「黙示の許諾」と考える方々がいらっしゃいます。他のことはわかりませんが、著作権法制度においては、けっしてそのようなことはありません。違法行為は違法行為です。
「黙認」という言葉がよくないですね。「認」という字があるからでしょう。まるで「許諾」しているかのようですから。何かいい言葉はないものでしょうかね。
閑話休題。違法行為は違法行為です。ですから、許諾についてたずねられたら、「ダメ」というしかありません。ですが、これによって直ちに全ての「黙認」された行為がダメとなってしまうわけではありませんので、御心配は無用だと思います。ただし、どうしても見逃せないことについては間違いなく当然権利行使をするでしょう。
【追記】
補足説明しておきます。以前にも書きまして繰り返しになりますが、日本においては、許諾なく二次著作物を創作すること自体は違法ではありません。違法でないどころか、この無許諾の二次著作物にも著作権があるとさえされているのです。
許諾なき二次著作物を、許諾を得ないままで公表することや販売することが違法なのです。
コミケでの同人誌販売は、この点において黙認されているにすぎないのですが、この点を理解していない人はけっして少なくないと思われます。
国会での答弁を聞いた限りでは、どうやら安倍総理は、少なくともこの点は理解しているようです。
なお、アメリカでは、許諾を得ずに二次著作物を創作すること自体がすでに違法となります。だから、アメリカでは同人文化が日本より発達していないようです。