実際のところ著作権は難しく意識されにくいのだろうな その2
(その1の続きです。)
さて、前回を踏まえて④今回のニュースの件を考えていきます。
そもそも、今回はファンや素人が行ったものではなく、地元の画家、つまりプロが行ったものです。無償の奉納のようですので、非商業的行為ではありますが、画家は無償奉納をしたという地元での名誉(それとささやかな自己満足感)を得ることができます(未確認ではありますが、神社はこの絵を利用した普通サイズの絵馬の販売をしようと考えていたようです。)。
そして、なによりもまず、形式的には、あくまで著作権侵害です。トレースしたそのままの完全モロパクリです。
ただ、実際には、不当利得は得ていないようです。その点で、著作財産権(複製権)の侵害はない、と言っていいと思います(もし前述のとおりのことを神社が考え実行していたら、当然これは神社による著作財産権(複製権)の侵害になるといえるでしょうし、画家にもなんらかの責任が発生するように思います。)。
また、そんなことないと思いますが、もし、これによりもし原作マンガの売れ行きが落ちたならば、損害が発生しているので、その損害の賠償請求はできると思います。差止もです。もちろん、その損害の因果関係の証明ができないと裁判等で認められることはないでしょうけど。
今回はマンガのケースであるので、件の画家も神社側もマスコミも著作権侵害かどうかの認識が甘くなってしまったのではないか、と思います。
少なくとも、事件を詳しく報道することなく、単純に「著作権侵害だ」としてしまうマスコミには大きな責任があります。
時々、「マスコミは、本当に著作権わかっているのか?」と思う時があります。著作権侵害と非難することは簡単ですが、具体的にどう著作権侵害なのかマスコミは説明すべきです。そうでないと、逆に世間に誤解と嘘を広めるという、マスコミとしてしてはいけないことをしてしまいかねません。著作権に密接に関係する仕事をしているマスコミとしては、あまりに無責任で意識が低すぎます。
また、そのための社会的背景の構築として、著作権教育は必要なのかもしれません。