知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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意匠と商標と著作権、それぞれの違いとかいろいろ その3

(その2の続きです。)

その1とその2に書いたことを踏まえ、下記の例を考えてみたいと思います。


例1
ある世界的スポーツイベントのエンブレムのデザインを、デザインコンペティションにて選んで決めたが、そのデザインは「うちのマークデザインのパクりであり権利侵害だ」と主張され、差止請求の訴えをおこされた。

まずこれは、(少なくとも日本では)意匠は関係ありません。商標と著作権とで考えられます。
とはいえ、以前にも書いたと思いますが、エンブレムやマークのデザインを著作権で保護するのは、私個人としては、なんか違うと思います。基本的に著作物だとは私には考えることはできないからです。他の国の著作権法制度はわかりませんが、少なくとも日本国内においては、著作権は認められないでしょう、きっと。
なので、日本では、この場合は、商標権侵害でない限り、差止請求が認められることはない、と私は考えます。
ただ、法制度は国によって多少なりとも異なります。他の国でも同じかもしれませんし、また、そうでないかもしれません。だから、五輪エンブレム事件のようなことがおきた、のでしょう。これが、日本国内だけにとどまる話ならば、もっとすんなり解決した話だと思います。
日本国内では基本的に「商標」の問題となるでしょうが、日本国外では必ずしもそうならないので、この手の国際的問題は今後もおきると思います。残念なことですが。


例2
ある企業が、販促キャンペーングッズに載せる絵のデザインを、某デザイン会社に依頼したところ、幾つかある絵ができたが、そのうち数点が、他の人の絵や写真のパクりであることが発覚した。

この場合は、結局パクり元のデザインに「著作物性があるかどうか」でだいぶ変わると思います。著作物性があれば著作権侵害ですし、著作物性がなければ当然著作権侵害にはなりません。著作物性の有無がポイントといえます。これは各絵個別の判断になるでしょう。その他、依拠性等の要件も考えなければなりません。
意匠、商標について考えると、パクり元デザインも、キャンペーングッズで用いられたデザインも、登録されていないなら、どちらにも意匠権商標権はない、といえます。
登録されていれば、それを元に考えることができますし、また登録されていなくても、先使用権を考えることができる場合はあるでしょう。さらに、不正競争防止法を考えることもできる場合もあるでしょう。登録されていれば。
これらを前提にして、私はケースごと、というかデザインごとに、(極端にいえば裁判で)白黒はっきりとさせるべきだと考えます。もちろん、意匠、商標、著作権をわけて考えなければならないのは、言うまでもありません。



あら、はっきり明確に書こうとして、結局曖昧になってしまいました。

私が言いたいことは、結局、「デザインケース毎に、権利が正しくあるかどうか、あるならその内容は具体的にどうなのか、その検証をちゃんと行うこと。」です。それがたとえ、裁判をしなければならないことになり、結果時間、金銭、労力がかかることになるとしても、です。
これを避けて、中途半端に問題解決をはかり、結局根本的な解決には何一つならなかった、それがこの事件だと思います。
付け加えるならば、無知な関係者、無知なマスコミ、表面的なことしかみることができない世間や我々が、今回の事件を最悪なものにしってしまったと思います。

件のデザイナー氏は全く悪くない、という気はありません。しかし、みんなよってたかってこの人をスケープゴートにしてしまった、我々のその罪はとても重いと思います。

そして間違いなく言えることは、「根本的な解決にはならなかった以上、今後もこのようなことはなんどもなんども繰り返される。」ということではないでしょうか。