知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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意匠と商標と著作権、それぞれの違いとかいろいろ その1

五輪エンブレムをはじめとするいろいろなデザインにおける某デザイナーの疑惑の件をきっかけとして、今更ながらですが、最近私は「産業デザインの権利は結局いったい誰にあるのだろう?」という疑問を持っています。
つまり、今回の某デザイナーの場合、権利は、某デザイナーにあるのか、それともデザインを依頼した企業や組織にあるのか、というところでしょうか。
そして、これはもしかしたら大事なことではないか、という気が個人的にはしています。

また、今、少し時間がたってあらためて考えると、某デザイナーばかり非難されたのはちょっと違うのではないか、という気がしています。
一つ一つ、それぞれのケースをちゃんと見極めた上で、それぞれ別々に考える必要があるのではないか、と考えるようになってきました。


で、今回のような問題を考える場合の前提条件として、意匠と、商標と、著作権と、権利についてそれぞれわけて考える必要があり、さらにそれを各個別のケースに当てはめてそれぞれに考える必要がある、と考えるようになりました。


というわけで、意匠と商標と著作権について、それぞれの違いとかいろいろ書いてみたいと思います。


ちなみに、私の定義する「産業デザイン」とは、企業や組織、及びその商品や役務(サービス)等の「ロゴやエンブレムマークのデザイン」から、「商品そのもののデザイン(商品の形状デザインや、商品に描かれた絵などのデザイン(アイコン等の類も含めます))」まで、指します。私の考えでは、割と広い概念です。


さて。実際に考えてみます。


まず、意匠の場合。
まず、意匠の創作者たるデザイナーが意匠を創作すると、そのデザイナーには、「意匠登録をする権利」が発生します。そして、登録出願をしてそれが登録されると、そのデザイナーは「そのデザイン意匠の権利(つまり意匠権)」を持つことができます。
企業が、デザインを外部の企業やデザイナーに依頼した場合は、前述の「意匠登録をする権利」を譲渡してもらって自ら意匠の登録出願をして意匠権を取得するか、デザイナーが「意匠権」を取得してから、その「意匠権」を譲渡してもらうか、のどちらかでしょう。もちろんデザイナーから許諾、ライセンスを受けてその意匠デザインを使用する場合(権利はなおデザイナーにあります)もあるでしょう。
登録されるためには、いろいろな条件(要件)をクリアして審査にパスしなければなりません。なお、ここではその要件の説明は、特に必要がない限りはしませんが、一つだけ説明すると、意匠の場合は、その登録には「デザインの物品性」がないといけません。例えば、パッグの形状やバッグに描かれた絵にオリジナリティがあれば、バッグの意匠として登録されますが、ただその場合形状そのものだけや絵そのものだけが登録されるわけではありません。必ず「バッグ」という商品の「物品性」がないと、登録されません。「バッグ」のデザイン、「バッグ」の絵として登録されます。デザインや絵だけが登録されるわけではありませんので、注意が必要です。
意匠を登録して権利を取得することは、なかなか大変ですが、意匠権を取得できれば、強い権利を得ることになります。


次に商標の場合。
商標の登録出願は、誰でもできます。先の意匠の場合は、意匠を創作した人か、あるいはその人から意匠の登録を受ける権利を譲渡された人や企業等しか、出願ができません。
例えば、ある企業Aがあるデザイン会社Bにエンブレムマークのデザインを依頼したとして、そのデザインをしたデザイナー本人Cが商標登録出願することもできますし、そのデザイナーが所属しているデザイン会社Bが登録出願することもできますし、依頼をした企業Aが登録出願することもできます。もちろん、このデザインを知った第三者Dが、仮に悪意で「先に権利を取得してしまえ」と登録した場合でも、その登録が認められる可能性があります。その点で、商標はとにかく先に出願して登録されたものがその商標権を得る、ということになります。商標は、意匠と異なり創作性が問われることがありませんしこのようなことがあるのです。
もちろん、商標の場合でも意匠と同様に、登録されるためにはいろいろな条件(要件)をクリアして審査にパスしなければなりませんが、その条件(要件)は意匠とは異なります。
また、商標も権利取得は思ったよりけっこう大変です。しかし商標権を取得できさえすれば、意匠と同様に強い権利を得ることになります。


(その2に続きます。)