知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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原了郭の「黒七味」とロッテリアの「京都 黒七味『風』」問題(1)

まず、今回の、この件について、前提となる諸々の事項を書きます。


原了郭は、「黒七味」について2つの商標権を持っています。
1つは、四角の中に、真ん中に縦に大きく「黒七味」の文字があり、その右側に「京都 祇園名物」の文字が、左側に「本家 原了郭製」の文字が、「黒七味」の文字よりは小さく縦にある、というものです。文字商標でしょうが、その文字全体が四角で囲まれていて、ハンコみたいです。非常に簡単なデザインではありますが全体的にマーク商標といってもいいのかもしれません。この商標の指定商品は「香辛料」です。
もう1つは、毛筆で書いたような縦の「黒七味」の文字で、文字商標であり、又ある種のロゴ商標といっていいでしょうが、さほど特別なロゴというわけではないと思います。この商標の指定商品は、「白胡麻・黒胡麻・一味・山椒・けしの実・麻の実・青のりを主原料とし前煎りした後さらに手もみで練り合わせて製造した七味唐辛子」とかなり限定的な権利内容になっています。なお、この後者の商標は、一度特許庁から拒絶査定を受けたようです。特許庁に拒絶不服審判請求をする等した結果、拒絶査定が外れて、商標登録をすることができた、ということでしょう。

なお、これらのことは、J-PlatPatで、「黒七味」という商標名を商標検索すると確認できます。


さて、私が今回の事件を聞いて最初に思ったのは、「京都黒七味『風』」という表現が、直ちに商標権侵害になるのか、ということでした。
確か以前、「シャネルNo.5と『同じ香りのタイプ』」、「シャネルNo.5『タイプ』」という表現が問題とされた2つの裁判がありました。これは、昭和の裁判の方が、被告が被告商品の香水の香りをシャネルNo.5に似せていたらしく、その香りを似せた行為とそれを「シャネルNo.5と『同じ香りのタイプ』」という表現をした行為が不正競争防止法違反かどうかを争ったものです。平成の裁判の方が、「シャネルNo.5『タイプ』」という被告の表示が原告の商標権を侵害するかを争ったものです。昭和に一度、平成に一度、それぞれ別の裁判があったわけです。結論は、昭和の裁判では、不正競争防止法違反とは認められず、平成の裁判では、商標権侵害で商標権違反と認められました。
裁判でさえ、法は違えど逆の判断がされています。ですから、「◯◯『風』」又は「◯◯『タイプ』」という表現があれば、直ちに商標権侵害で商標法違反、あるいは不正競争防止法違反になる、というわけではありません。経済産業省のホームページでも、「事案よって異なってきます」「事案により商標法違反又は不正競争防止法違反を個別に判断する必要があります」と書かれています。その点は、御注意ください。
私自身も、「京都 黒七味『風』」のケースにせよ、「シャネルNo.5『タイプ』」のケースにせよ、非常にグレーだと思います。もし本当に白黒つけるならば、結局、ケース毎に裁判をおこして、争うしかないのかもしれません。(なお、この「◯◯風」については、後日にあらためて書く予定です。)


とはいえ、今回はロッテリアは、原了郭のクレームに対して、すぐに販売停止を決定し原了郭に謝罪をするという対応をしました。これはこれで、1つの解決方法として当然ありです。余計な時間も手間も金もかけない解決方法として非常にスマートであり、素直に原了郭に謝罪をしたロッテリアに対し世間の評価はむしろ高まったのではないでしょうか。
また、原了郭は、今回は「黒七味」のブランドイメージ、商品イメージを守る為にした当然の行為であって、ロッテリアを妨害するためにしたわけではけっしてないのはいうまでもありません。

めでたし、めでたし。



と、これで終わると、このブログで取り上げた意味がありません(笑)。
次回は、もっとつっこんで、今回の件について、私の見解を書いていきたいと思います。


(2に続きます)