知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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小売役務商標における商標の使用又は使用意志の確認

このあいだ、久々に会社で、国内商標権取得の為の業務をしました。

今回は本当に久々に「小売役務」商標の業務でした。それで、私はしっかり「原則として、2つ以上の互いに関係ない(つまり類似群コードが異なる)小売役務を指定した商標の申請は拒絶される」ことを、忘れておりました。

「2つ以上の互いに関係ない小売役務を指定した商標の申請は拒絶される」とは、どういうことでしょうか。
例えば、家電品販売の会社が、自社の会社名の商標権を取得しようとします。その指定役務を、「電気機械器具類(家電品はまずこれ)の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」だとします。この家電品販売の会社では、パソコンやスマホ等に関する雑誌や書籍も販売しているので、「印刷物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」も、この商標の指定役務として、それで両方指定して出願しようと考え、実際そうしたとします。そして、この場合においては2つ以上の小売役務を指定して商標の申請をしたのであり、そしてそれらは互いに関係のない小売役務とされるので、結果拒絶通知がくる、ということです。
パソコンやスマホについての雑誌、書籍ですから関係ある小売役務になるのではないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、商標法制度運用上、電気機械器具類(家電品)と印刷物(雑誌、書籍等出版物)と、それぞれの小売役務は互いに関係なし、となります。
よって、日本の商標制度の運用上、原則、2つ以上の互いに関係しない小売役務を指定して商標の申請をしても、それは認められない、ということなのです。


この、「原則として、2つ以上の互いに関係しない小売役務を指定しても認められない」ことは、今年の1級ブランド分野の実技/面接試験でも、問題文として出題されていましたね。


さて、「原則」ということは、何らかの方法で認めてもらう方法がある、ということです。
それは「事業証明」です。自社が「ちゃんとこれらの小売役務をやっていますよ(あるいは、これから会社の事業としてこの小売役務をしますよ)」と証明できればいいわけです。「『商標の使用』、又は『使用意志』があること」が確認できればいいわけです。
具体的には、実際に事業をやっているならばその証拠となる写真をとるなどして証明として提出するとか、将来的に事業をやるならば事業の準備の証拠となる写真を用意したり事業計画書を用意して提出する、などです。
その手続書類は、「上申書」とか「手続補足(補正ではありません)書」とか呼ばれるようです。


なお、互いに関係しないいろいろな物を各種販売しているデパートや百貨店等には、所謂「総合役務(衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供)」が認められています。ただ、この総合役務、誰にでもどんな会社にも認められるわけではありません。やはりその事業証明をしないと認められないようです。


加えて。商品商標、及び小売卸売役務以外の役務の商標においても、同じように「事業証明」をしなければならない、「商標の使用」や「商標の使用意志」の確認が必要となる場合があります。出願商標での商品・役務の指定において、その指定がいわゆる「1区分内における類似群コードが8以上ある」と判断できる場合や、その出願者が本当にその指定商品・指定役務の業務をするのか明らかに疑わしい場合、特許庁はその商標の使用又は使用意志の確認をする、その結果次第によっては拒絶する、というのがこれです。