知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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著作権の「利用」と「使用」についてまたまた考えてみる

(以下に書くことは、あくまで日本の著作権法制度での話です。)


以前にも、各知的財産権における「使用」と「利用」について書きましたが、今回は著作権における「利用」と「使用」についてフォーカスして書きます。


著作権法、第二章、第三節、第五款(第30条〜第50条)において、「著作権の制限」が規定されています。
これは、いわゆる著作権の「例外」が定められていて、この例外行為においては著作権は制限されてしまう、というものです。

で、この例外行為をみますと、「利用」という総合的な表記をしたり、「利用」という言葉を使わずに具体的な行為として「複製」(又は「複製『等』」)、「展示」という言葉を表記したり、さらに「引用」のようにより具体的な行為の言葉を表記したりして列挙しています。

その中で極めて目立つのは「使用」という表記です。あらためて、著作権法条文をみますと、「使用」という言葉を表記しているのは、「私的『使用』」(第30条)と、条文中で表記されているだけですが「教科用拡大図書等の作成のための複製等」(第33条の2)、「この2つだけ」です。私が見落としていなければこの2つだけです。
このことから、実は著作権法上、「使用」という言葉はほとんど使われていないことがわかります。「利用」という言葉はわりと使われているのに対して少ないです。
まあ、「使用」という言葉こそ使われていませんが、「使用」のニュアンスが感じられる、少なくとも「利用」だけではない、と思える内容の条文があるように思えます。「利用」という言葉の中に「使用」の概念を含んでいるような条文もあるように思えるのです。逆に、「使用」という言葉が使われているのはあくまで「使用」という言葉の意味としてのみであり、そこには「利用」の概念はけっして含まれていない、と思えてなりません。

その考えると、著作権法上「使用」という言葉は、嫌が応にもはっきりしているのではないでしょうか。

ちなみに、私は、「使用」「利用」の他、「活用」という、「使用」と「利用」の中間概念を持っていて、「利用」の中に含まれる「使用」概念は、これ、あるいはこれに近いものと考えています。


これらをふまえて、今回あらためて「使用」についてまたまた書きたいと思います。


以前にも書いたと思いますが、私は、「使用」と「利用」の一番の違いは、その著作物を用いることで経済的利益を得ているかどうか(あるいは著作物を用いた結果その著作権者に経済的不利益を与えているかどうか)だと考えます。
だから、たとえ「私的」で用いても、自分が経済的利益を得る場合(あるいは著作権者が経済的不利益を与えられてしまう場合)は、それはもはや「使用」ではない、「利用」だと私は考えます。
そして、「使用」する主体と、「利用」する主体、その主体の違いも要素として大きいと、私は考えます。「使用」主体は著作物の表現の受容者(つまり「使用」行為は著作物に対して受動的)ですが、「利用」主体は著作物の表現の受容者ではありません。むしろ、表現する立場側(つまり「利用」行為は著作物に対して能動的)ではないでしょうか。



そもそも、まず基本として、本来は著作権者以外は著作物を「利用」することができません。著作権者以外のものが「利用」すると、それは著作権を侵害する行為となります。
そこで、まず、著作権者の許諾を得ることで、著作物を「利用」することができることになっています。
そして、著作権者の許諾を得なくても、その著作物を「利用」できる「例外」が、著作権法上認められているのですが、その「例外」の中の一つの中に、「利用」ではなく、必然的にしかし形としてはたまたま「利用」ではない「使用」があるにすぎない、と考えてます。


(なお、個人的には「使用」概念は「利用」概念に完全に統合され、結果なくなると考えています。「私的『使用』」についての条項は、「私的『利用』」となり、その内容も多少なりとも改正される、と考えています。その理由については、いずれまた書きます。)