五輪エンブレム問題と応用美術
著作権法第2条2項に、美術工芸品は美術の著作物に含まれると明確に書かれていますが、応用美術は美術の著作物に含まれるとまでは書かれていません。美術工芸品とはいえない応用美術(例えば、美術芸術性がかなり低い量産工業製品はそうだと私は考えます。企業のマーク等も応用美術であり、美術芸術性が全くないとはいいませんがかなり低いと考えます。)は著作物として保護されるべきなのでしょうか。
今回の五輪エンブレム問題はこの問題を投げかけた、と私は考えてします。
著作権の国際条約であるベルヌ条約では、「応用美術も著作権上て保護される」と規定されているようですが、その実際の保護については、条約同盟各国の法に委ねているので、その保護の程度は当然国によって異なり、ある国では手厚く保護されている応用美術が、他の国ではほとんど保護されない、ということになりえます。
なにが言いたいかというと、ベルギーと日本では、この応用美術についての考えにズレがあるのかな、ということです。
そして、日本においても、前述の裁判で、応用美術でも著作権が認められたことから、応用美術にも著作権が認められることがありうることをあらためて私は認識しました(もちろん、この裁判、今後最高裁まていって、逆の結果になる可能性があります)。
だから、オリンピック組織委員会が件の五輪エンブレムの使用をやめる決定をしたのもさもありなんだと、私は考えた次第です。(ただ、その決定をくだすのがいささか遅すぎでないか、と私は思います。スポンサー企業はじめ、社会に大影響を与えることになると考えなかったのでしょうか。もしそのリスクを承知で決定したのであれば、実に大英断だとは思います。)
この判決といい、五輪エンブレム問題の件といい、今後日本の、いやもしかしたら全世界的規模での、著作権法制度の考え方が革命的に変化する予兆では、なんて思っています(笑)。(笑)なんて書きましたが、TPPの知的財産分野の著作権についての動きも、その変化の一つのあらわれではないか、と危惧しています。