再びキャラクター論 その2
(その1の続きです)
話題を変えます。
サザエさんバス事件について書きます。
私は、サザエさんバス事件の判決には少しもの足りなさを感じています。
この裁判で、キャラクターについて言及されてはいるものの、キャラクターの著作物性について、この判決では必ずしも明確にされていないと思います。この裁判においてはそこまでする必要はなかったのかもしれませんが、私は違和感を感じています。
これまで書いてきましたとおり、私は、常々、原則キャラクター「だけ」のものに著作権を認めない立場をとっています。あくまで、漫画等主たる著作物があってこそ、あわせてそのキャラクターにも同じ著作権を認めるという立場です。
しかし、これが、キャラクターそのものだけのものならば、著作権(著作物性)を認めない立場です。
だから、もし漫画とかでない、ただのキャラクターなら、原則として、著作権(著作物性)を、私は認めることはできません(ただし、厳格にいつのどこに表現された絵であるなんらかの著作物である、ことが明確に証明できるならば、それに限定して著作権を認める、のが私の考えです。原則として、厳格に限定できないものには著作権を認めないのが、私の考えです。)。
まあ、私の考えはともかくとして、このことについて、裁判所は判決において、どのような意見であったとしても、はっきり言及すべきだった、裁判所としての明確な姿勢を示すべきだった、と私は考えます。
これはある意味、裁判所の「逃げ」ではないでしょうか。
私は、現在にいたるまでのキャラクターの著作権についての混乱の要因の一つが、この裁判の判決にあると考えます。この裁判で、キャラクターについてはっきりした見解を述べるべきだった、と私は考えています。そうすれば、キャラクターの著作権を認めるにせよそうでないにせよいずれにせよ、考え方の方向性は作られたのではないか、と私は考えます。
さて、さらに話を変えます(笑)。
キャラクターについて考える場合、別に著作権について考えなくとも、漫画やアニメ等の「キャラクター(の絵等)」自体にすでに「顧客吸引力」がある、ということが考えられるので、その観点でも保護を考えることもできるのではないか、と私は考えます。
これは、キャラクター(の絵等)を、あくまでマーチャンダイジングのみでの利用に当てはめてみて考えてみようということで、キャラクターがもっているかもしれない著作権を否定するわけではありません。誤解なきようお願いいたします。
例えば、あるキャラクター(の絵等)が商標権登録されていれば、商標法上そのキャラクター(の絵等)は保護されるわけです。実際に使用している絵と、登録している絵との、同一類似性の問題はあるかもしれませんが。
実際、商標法における先使用権、あるいは不正競争防止法における、未登録先使用(不正競争防止法上、先使用あるいは先使用権という言葉は使われていませんが、内在的に先使用の概念は含まれている、と私は考えます)の商標を含む、周知、著名な商品表示や、商品形態(こちらは周知性、著名性は求められていませんので、御注意)の保護が認められているのは、その根底に「顧客吸引力」的思考があるからだと思います(ただ、不正競争防止法における保護のための要件は厳しいです。世界的には日本の不正競争防止法はかなり緩やからしいのですが。)。
「パブリシティ権」は今のところ日本では「人」にしか認められていません(いわゆる「人のパブリシティ権」)が、私は、「顧客吸引力」のあるキャラクター(の絵等)には「パブリシティ権」を認めていいと考えています。いわゆる「モノのパブリシティ権」です。また、「顧客吸引力」があるならば、原則、人、モノ以外にも何にでも、実体のない概念にさえパブリシティ権を認めていいとすら考えています。
モノのパブリシティ権については、既存のいろいろな法律で対応できるから、わざわざあらたにそのような考えをもつ必要がない、という意見もあります。確かに部分的にはそうでしょう。でも、こぼれ落ちる部分もあるのではないでしょうか。
まあ、パブリシティ権については、また考えてみたいと思います。