知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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Win-Winの契約とは

以前に書きました、講座『交渉学基礎とロールシミュレーション』の説明の中で、「Win-Winの契約」と書きました。


「Win-Winの契約」とは何でしょうか?


以前の説明でちらっと紹介しました「法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー」(一色正彦・竹下洋史著、レクシスネクシスジャパン株式会社)のP39にある言葉を引用しますと、
「交渉前に存在する選択肢を相手にYESと言わせることを目指すのではなく、ミッションを判断基準として、相手の背景にあるコンテキストを引き出し、その上で、『双方に価値がある合意』を見いだそうとするアプローチ。」
での契約のことです。
(ミッション、コンテキストについては、私はここでうまく簡単に説明することができないので、前述の書籍等での説明を御参照ください。)(『』は、私が独自につけました。)

私流に書けば、「契約の交渉において、お互いの主張を引き出しつつ、妥協点は妥協し、一方妥協が困難な点やなかなか譲れない点はお互いに落とし所を模索しあう(そのための判断基準こそがミッションであり、そのそれぞれの背景こそがコンテキスト、だと私は思います。)、このやりとりにより、最終的に『お互い納得の合意の上』で、『双方にとってできうる限りのベストの内容』で締結できる契約」、これが「Win-Winの契約」だと考えています。


「Win-Win」と書いてあることから、双方が双方とも相手の要求を「全面的に」認めこちらの要求も「全面的に」認められる、どちらも「100%」のWin-Winでなければならない、と考える方がいらっしゃるようですが、そんなことは「現実不可能」です。それが可能ならば、そもそも交渉なんて無用です。

不可能だからこそ、前述の通り、交渉をして譲りあい最終的に『お互い納得の合意の上』(これ重要です)で、『双方にとってできる限りベストの内容』で締結できる契約を目指す必要があるのです。

一方的に有利、はダメです。相手に強制合意させるのもダメです(とはいえ、交渉の過程で自分のその強い立場をもって主張することはあります。そしてそれを相手が認める場合はあります。ですが、それを強制にしてはいけません。お互い納得していなければいけません。)。

一見そのように見えていて、実はWin-Winの契約であることもございます。
例えば、契約交渉の結果、相手方の言い分は9割、こちらは1割認められた契約合意内容となったとします。これでも「Win-Winの契約」となることはあると、私は思います。こちらはどうしても譲れない1割を認めてもらうために、相手方の主張の9割を受け入れることは、交渉としてありえます。
といいますか、そういう交渉をしたことがあります。1割の最重要の実利を得るために。残りの9割でもこちらの主張を認めてもらうにこしたことはないですが、こちらはこの1割を認めてもらうことこそが重要なのであり、その9割については相手方の主張を受け入れてもいいので、1割の要求を認めてもらうために、この9割については相手方の主張を受け入れました(もっとも、その9割で相手方の要求に従った場合でも、さほどにこちらは損をしないということだからこそ、受け入れることができたわけではありました。)。
相手方において、この9割が全て重要かどうかはわかりませんが、交渉をしていくうちにある程度はわかってきます(それは相手方の背景次第です。だから相手方の背景にあるコンテキストを引き出したり調査をしたりして、相手方の背景を知ることは重要なのです。)。そして、こちらが求める1割については相手方はさほど重要ではないことが判明したら。極端にわかりやすい例ですが、この9割と1割は、まさに「交渉の落とし所」であることがわかります(実際はこんなに簡単ではなく、もっと複数です。だからいろいろな代案が必要だったりして、交渉が必要となるわけなのです。これはあくまでわかりやすい例いうことで(笑)。)。


「Win-Winの契約」を締結するためには、手間(特に交渉前のいろいろな準備に)も時間(少なくともそれなりの交渉期間はかかる)もそれなりにかかります。私の経験では、基本契約の締結に、交渉だけで半年以上かかったこともありました。
それだけの手間と時間をかけるべきかどうかの見極めをした上で、そこまでするのがむしろマイナスであるならば、あえてわざと相手に全面的に譲歩して、すぐに契約締結を結ぶこともありました(もちろん、ただ譲歩するだけではなく、万が一のことを考えて、それなりにいろいろな「対策」はとりました。いっそのこと契約をしなければいいのかもしれません。ただ、私の経験では、よほどのことがない限り、取り引きをせず契約自体をなしにすることはこれまでなかったので、「そもそも契約をしない」という選択肢はありませんでした。ですので、「対策」をこうじる必要があるのです。もっとも日本だから通用する策ではありますが(笑)。)。
話を戻します。契約締結にそれなりに手間と時間がかかる以上、それをおしんではいけません。ただ、無駄に手間と時間がかかるようならば、比較考量の末、全面的に譲歩して契約する、あるいは別に契約締結をしなくてもいいならばあえて契約締結をしない、という選択肢もあるのではないか、とも私は考えます。
「この2つはもはや『Win-Winの契約』ではない。」かもしれません。
最初から交渉をせずに、相手に妥協してしまい契約を締結する、逆にはなから交渉せず契約できないとつっぱね締結をしないのは、確かに当然「Win-Win」ではありません。
ですが、交渉過程を経てその上でお互い納得合意の上ならば、全面的な譲歩による合意も、ものわかれにおわり契約を締結をしないのも「あり」だと私は考えます。大事なことは「お互い納得合意の上」であることだと思います。お互い納得してのことならば、それは当然ありではないかと。合意の上なら、これも「Win-Win」ではないか、と私は考えます。



ここで書いたことは、ことさら後半部分は、外国では話が異なることがあります。特に、契約締結した内容こそが全てで、それまでの交渉過程を一切認めない、アメリカでしたら話は違ってきます。ここに書いたことは、あくまで日本での話、ということで。