知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

宝生舞さんと著作隣接権(実演者権)

テレビ朝日が、放送番組(ドラマ「相棒」)の二次利用目的でその利用許諾を得るためとして、連絡を取りたいとのことで、一般社団法人 映像コンテンツ権利処理機構(aRma)のサイトにて、aRmaは、宝生舞さんの名前を「連絡を取ることができない不明者探索のリスト」の中にあげていたようです。
これは、宝生舞さんの「実演者(役者)としての著作隣接権」をちゃんと保護尊重するためです。 関係者がこれを見て、結果テレビ朝日は本人とコンタクトをとることができたようです。よかったですね。


さて、以下のようなことが書かれていたのをネットで見かけました。
「このリストの中には、タコ八郎さんのような、既に亡くなった人の名前がありますが。」
亡くなった方からは、許諾を得ることは確かにできません。ですから、リストに亡くなった方の名前があるのは、一見おかしいように思えます。だからこのようなことが書かれたのでしょう。
(なお、私はリストを直接確認しておりません。悪しからず。)

何故リストに、亡くなられた方の名前があるのか?これについて、「著作隣接権は相続や譲渡ができるからです。」というコメントがありました。
なるほど、です。

著作隣接権のうち、「財産権」の部分については、著作権と同様に、相続や譲渡をすることができます。
また、著作隣接権のうち、実演者の権利の保護期間は、「実演をした日から50年間」です。
ですから、実演者の権利の保護期間中に実演者本人が亡くなって実演者の権利を相続された場合や、権利譲渡がされた場合には、50年間の保護期間中に、実演した御本人以外の方が権利者にかわることが十分にありえるわけです。
権利を承継した新権利者は当然権利行使ができます。だから、放送局は、二次利用の許諾を得ていないならば、この新権利者から許諾を得る必要があります。
なので、リストにあげる意味は十分あるのです。繰り返せば、放送局等が再放送やDVD化等での放送番組の二次利用をする場合は、著作隣接権が相続や譲渡をされた場合では、現在の権利者に許諾を得る必要がある、というわけなのです。この許諾を得ないで二次利用をすれば、当然著作権法違反です。
(なお、上記については、著作権法第91条、第92条などを、御参照ください。また「ワンチャンス主義」などともあわせて御理解ください。「ワンチャンス主義」に対する考え方が若干変わるのではないでしょうか。)


NHKの昔のドラマのかなりの部分がが再放送できない理由は、まずこの許諾がちゃんととれていないから、だそうです。そして、昔はフィルムでしたから、時の経過でのそのフィルムの劣化のために、さらに余計に放送に使えなくなってしまう、という悪循環…。


なお、実演者の著作隣接権の場合には、「人格権」(同一性保持権、氏名表示権)も認められています。ただ、これは「一身専属性」のものですので、実演者が亡くなった場合は、その時この権利自体が消滅します。つまり、保護期間は、「生存中」ということになります。
これらの点で、著作隣接権の実演者権における「人格権」は、「財産権」とは異なりますので、御注意ください。
ただ、著作権著作者人格権と同様に、実演者の人格権においても、実演者本人が亡くなったとしても、例えばその方の名誉尊厳を傷つける等によりその方の人格権を侵害された場合等では、亡くなられた実演者の御遺族、親族は、亡くなられた実演者が生きていたらそうしたであろう権利行使ができる、と考えられています。
ですので、この人格権は、権利者死亡による権利消滅後も(一定の範囲で)その権利が保護される、という特殊なものといえます。また、こういう点で、ある意味、この人格権は実質的には「(一定の範囲での)『永久的』な権利」といっていいのかもしれません(あくまで基本的な考えは、「一身専属性」であり、人格権者死亡と共にその権利は消滅、です。)。「永久的」といっても、実際には死亡した原権利者の孫の代くらいまでしか認められないと考えられています。

重要なことは、著作権又は著作隣接権において、財産権の保護期間は終わっても、人格権では侵害が認められる場合がある、ということです。当然その人格権は守られなければいけません。財産権の保護期間が終わっているからといって、許諾なく二次利用をして、もし改変などしてしまったら、人格権が有効である以上、それは間違いなく人格権侵害になります。民事での損害賠償や差止の他、刑事罰もありますので、お気をつけください。



最近では、例えば役者が出演するドラマの場合では、最初の出演契約の段階で、将来の二次利用についてもあらかじめその契約にてとり決めているようで、この手の問題が起きないようにしている、そうです。
だから、契約は大事なんです。いいかげんというか、適当にしてはいけないものなのです。