知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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第2回1級ブランド専門業務学科試験問題 自分学習用解説 43問目&44問目&45問目 その2 44問目

今回は43問目&44問目&45問目のうち、44問目です。


第20回知的財産管理技能検定   第2回1級ブランド分野学科試験の自分勉強用解説、43問目&44問目&45問目について書きます。今回は44問目です。


43問目&44問目&45問目は、英国Intellectual Property Office(IPO、知的財産庁)における異議申立事件101495号(2013年6月20日付)についての問題です。

44問目は、下線②において、技術的効果を達成するために必要とされる形状を有する商標についての問題で、「適切」な選択肢を選ぶ問題です(下線②は英文で、このブログの最後のほうに、私の拙い日本語訳をのせておきます。)。

選択肢アは間違いです。技術的効果を達成するために必要とされる形状が、商標登録を求めるにあたって商標形状の「非本質的」な特徴部分であるなら、その商標登録は認められます。これは、英国がどうのこうのというより、世界中での商標における基本的な考えと言っていいと思います。英国でもそうですし日本でもそうです。
選択肢イは正しいです。英国商標法第3条(2)(b)の解釈について、この選択肢の文は妥当と考えられます。「特定の者に独占させることを回避するため、技術的効果を達成するために必要とされる形状は商標として登録されないと規定している」というのも、英国がどうのこうのというより、世界中での商標における基本的な考えと言っていいと思います。英国でもそうですし、もちろん日本でもそうです。
選択肢ウは間違いです。以前に書いた、いわば「『事実について書かれている』選択肢は、事実かどうかわからないようなものは、まず正解でない」のセオリーどおりです。はい、解説終わり、というわけにはいきませんので(笑)、詳しく見ていきます。Hearing Officerとは「英国知的財産庁聴聞官」とのことです。そのHearing Officerが、「製品(途中、略)は、技術的効果を達成するため」のものであっても「本願立体商標の形状は使用により著名となっているから登録の障害とはならない。」と述べたとのことですが、一見これは正しいようですが、技術的効果を達成するための形状は、使用により著名になっていても登録は認められないので、登録の障害になります。これは、条項の記載の順番から考えればわかります。但書部分は第3条(1)に書かれていますが、このことは、この但書は次に書かれた第3条(2)とは関係がないことを意味するといえます。
選択肢エは間違いです。これも、以前に書いた「『事実について書かれている』選択肢は、事実かどうかわからないようなものは、まず正解でない」のセオリーどおりです。これも、はい、解説終わり、というわけにはいきませんですね(笑)。シツコイ(笑)。では、詳しく見ていきます。Jutice Arnoldは、「アーノルド最高法院裁判官」のことです。で、そのアーノルドさん(笑)が、1つ目は「製品自体の性質に由来する形状」、2つ目は「技術的効果を達成するために必要な形状」、これらは「登録が否定されない」と考えた様ですが、これが間違いで、「登録は否定されます」。「技術的効果を達成するために必要な形状」が登録を否定されるのは、もう御理解いただけていると思います。英国商標法第3条(2)(b)に記載されているとおりです。そして「製品自体の性質に由来する形状」が登録を否定されるのも正しいです。例えば、スプーン。枝の部分の装飾デザインは異なっても、匙の部分があり、それに持つ部分である枝がついているという、スプーンの基本的フォルム、基本的形状は、どのスプーンでも共通です。この基本的形状部分は、「製品自体の性質に由来する形状」といえます。そしてこれを登録商標として、特定のものに独占させるわけにはいきません。ちなみに説明文にある英国商標法第3条の、省略されている(2)(a)が、実はこの「製品自体の性質に由来する形状」です。以上のことから「登録は否定されます」。もちろん、この形状が登録における商標の非本質的部分で別に本質的部分があるのであれば、認められて登録となる可能性はあります。

よって、選択肢イが「適切」で正解です。



このように説明すると、44問目のどこが悪問か、という人もいるかもしれませんが、私は選択肢ウ、選択肢エの存在が悪問たる所以と考えます。選択肢ウ、選択肢エは、受験者を悩ませる以上に、無意味な弊害があるだけとしか、私には思えません。
まず「無意味な」英語表記はやめるべきです。Hearing Officer、Jutice Arnoldは、それぞれ「英国知的財産庁聴聞官」、「アーノルド最高法院裁判官」と日本語表記で書くべきです。英語表記には全く「意味がない」のに、英語表記に何か意味があると考えてしまう人がいて、余計な考えをめぐらしてしまうかもしれません。もし、これが出題者の意図ならば、これは単なる「悪意」以外のなにものでもありません。なお、NestleやKIT KATは、固有の名称ですからこのままでいいと思いますが、念のため「Nestle(ネスレ)」「KIT KAT(キットカット)」と表記しておくべきでしょう。

そして、選択肢ウ、選択肢エは、前述のとおり、43問目の選択肢ア、選択肢ウと同様に、事実内容が書いてあり、その真偽が問題文、説明文、選択肢の文からは判断できない以上、この2つの選択肢は、出題自体が無意味、いやむしろ弊害があり、よってこれはやめるべきだと思います。



最後に下線②(及び英国商標法第3条(2))の訳を書いておきます。私の訳ですのでうまくはありません(笑)。また訳の正しさは保証できません。悪しからず。

下線②
「その商標は、技術的効果を達成するために必要な商品形状で、もっぱらそうであるにすぎない。その商品形状は、物品の生産に、また商品をわけたり食べやすくするのに、貢献するだけである。従って、当該商標の登録は、英国商標法第3条⑵b違反である。」

英国商標法第3条(2)
「⑵もし、その標識表示が以下の内容をもっぱら含むだけのものであるならば、商標として登録されることはない。
a.略(ですが、前述のとおりです)
b.技術的効果を得るために必要な商品形状
c.略」



(次回に続きます)