知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

シェトワ事件について

前回予告したとおり、「シェトワ事件」について、ちょっと気になった点を書きます。

まず、どのような事件か簡単に説明しますと、特許庁による、商標不使用取消審判において、この取消請求が認められ不使用取消になったのですが、これを不服とした被請求者側が、裁判をおこし、その際、審判時には提出しなかった新たな使用証拠を被請求者側は提出、これが認められ、逆転判決で不使用取消にはならなかった、という事件です。

ポイントは、「審判時に提出していない新たな証拠を裁判時に提出して、それが認められた」ことです。ネットで他の方が書いたブログを見ますと、なんか釈然とされていらっしゃらない方が少なくないようです。
かつて、特許の裁判で、「メリヤス事件」というのがありましたが、こちらは、「審判時に提出していない新たな証拠を裁判時に提出しても、それは認められない」という原則どおりの判決です。


両者の違いはなんでしょうか。もちろん、前者は商標、後者は特許、という違いがありますが、このことは本質的にはさほど関係ないと思います(笑)。
むしろ、前者は「不使用取消」で、後者は「無効取消」ということが重要かと考えます。

後者は、事実を基にして無効か否かをどう「判断」するか、が争点です。いわば、アナログ的な「判断」が求められたのです。
ですから、新たに証拠が提出できるとなると、「判断」の基準となる事実が簡単に拡張されてしまい、正しい「判断」をすることができなくなります。
それに対して、前者は、不使用か否かの事実「認定」が争点です。「判断」ではありません。いわば、デジタル的な「認定」が求められたわけです。不使用なら取消になりますし、使用なら取消になりません。これは「認定」、別の言い方をすれば、事実の存在の有無を「機械的に判断」するだけです。事実をどう考えるか、というようなことはありません。
もちろん、証拠を提出した側が「この使い方は商標の使用である」と勝手に思いこんでいるかもしれませんが、裁判官はよほど微妙なものでない限り、そのあたりはちゃんと見極められると考えます。そうでなければ、裁判なんてできません。
むしろ、裁判における使用事実の新たな証拠提出を、「後出しだから」として認めず、切り捨てることこそが事実をゆがめるのであり、私はおかしいと考えます。もちろん、無期限でこれを認めると、全然審理が進みませんから、「使用の事実の立証は、事実審の口頭弁論終結時に至るまで許される」とされているのです。


「判断」と事実の「認定」、別な言い方をすれば、前者は'How'、後者は'What'です。これらの違いが大きかったのではないかと、私は考えます。杓子定規に、原則の考えにとらわれずにジャッジした裁判官、流石です。


ちなみに、この判例から、知的財産管理技能検定1級ブランド専門業務学科試験、サンプル問題29問目の選択肢エの文は不適切であると判断でき、よって間違いということになります。