知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

【今日もちょっと緊急】 IGZO商標

先日のキユーピー商標の件に続いて、今度はシャープのIGZO商標の件が、ネットニュースに掲載されてますね。

こういうニュースは、当事者の方々には申し訳ございませんが、私には生きた実例としてとても勉強になります。


IGZOとは、ウィキペディアによると、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、亜鉛(Zinc)、酸素(Oxide)から構成されるアモルファス半導体の呼称、及びこの半導体を利用した液晶ディスプレイ形式の呼称、ということらしいです。

大事なことは、科学技術振興機構(JST)が、IGZO半導体の特許を既にとっていることです。そしてシャープにはその特許のライセンスがされていて、シャープは前述のディスプレイにこの半導体を利用したわけです。

今回の事件では、JSTとしては、特許の実施やライセンスに「普通に使われる」言葉が他者に登録され商標として独占使用されてはこまる、という至極当然の主張をしたにすぎず、また特許庁の審決でも、高等裁判所でも、商標法第3条1項3号違反で、シャープの主張が拒否され商標登録を無効取消となったたのも、当然の判断の帰結にすぎません。

シャープは商標法制度を何もわかっていない、と言っていいのではないでしょうか。少なくとも、審決がでた段階でなぜその審決の意図が理解できなかったのか、疑問です。理解できれば、無駄な金、時間、労力をかけずにすんだわけです。商標に詳しい人材が、シャープにはいないのでしょうか?
シャープの主張どおり、シャープがIGZOを世間に知らしめたとしましょう。それでも、このIGZO商標の独占的使用が、認められていいわけがありません。
IGZOという言葉は、現在では世間一般的にはシャープの商品名としても知られていますが、その前から前述の半導体を示す言葉として、研究者の間では「普通」に知られ「普通」に用いられている言葉なのだそうです。このような言葉を、特定の人物や組織が独占してのでしょうか。特許庁審決や裁判では、否、と判断したわけです。


もし万が一シャープが最高裁に上告して、仮に逆転でき最終的にシャープにこの商標の登録が認められたとしても、JSTが商標法第29条を主張してこれが認められれば、シャープは実際にはこの商標を商標として使用することはできない、ということになるでしょう。

登録しても使用できない、商標法制度はなかなかよく考えられています。


なお、アルファベットではなく日本語での商標「イグゾー」は、無事登録されているらしいです。
とはいえ、経営が苦しいシャープとしては、IGZOブランドで海外に進出するために、その足がかりとしてアルファベット商標「IGZO」の権利を日本でおさえておきたかったでしょう。その気持ちはわかりますが、法制度は法制度ですからね。ルールを変えるわけにはいきません。