知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

平成26年改正著作権法 出版権 その1

サンプル問題解説はちょっとブレイク。先日受講したセミナーについて書きます。


正直、「出版権」はこれまでほとんど気になっていませんでした。昨年の著作権法改正、今年の1月1日での改正著作権法の施行は一応知っていましたが、ほとんど関心ありませんでした。

ただ、最近になって、現在の電子出版関係の流れなどで、どことなく、ちゃんと「出版権」を理解をしなければいけないな、と考えるようになりました。

今回、先日参加した、日本知財学会知財制度・判例分科会が、コンテンツ・マネージメント分科会との共催で、改正に関わった方による、平成26年著作権法改正における「出版権」についてのレクチャーのセミナーを開催すると知り、いい機会だと思い参加しました。

講師は小坂準記弁護士です。2012年7月から昨年末まで、文化庁長官官房著作権課に、著作権調査官として、御出向なされた方です。


私は、一応、改正前著作権法での「出版権」を、基本的程度で少しは理解していたつもりでした。ですが、やはりその理解は足りなかったようです。小坂弁護士が、今回の改正の経緯をはじめ、改正の内容等をわかりやすく説明してくださって、「出版権」というものをあらためてすんなり理解することができました。


「出版権」は、これまで「複製権」的側面しかありませんでしたが、今回の改正により、電子出版においては「公衆送信権」的側面ができた、といってよいかと思います。
「出版権」は、著作権法の各権利と比較して、特殊な存在です。
著作者(著作権者)と出版社との「契約」により、著作者(著作権者)が出版社に権利設定をすることで、はじめて出版社は「出版権」を持つことができます。「契約」による権利設定、というのが特殊なのです。だから、著作権法上すでに出版社には「出版権」が認められている、というのは間違った認識です。

今回の改正で何が変わったかと言いますと、「『出版権』が電子出版にも対応する内容に改正された」、ということです。契約の設定範囲が、電子出版までに広がり、それにあわせて、電子出版に対する侵害に対しても、出版社自らが差止請求ができるようになりました。
権利の範囲は、紙媒体のみ、電子出版のみ、両方、と契約で設定できます。
あと、出版社は「出版権」の再許諾ができるようになったことも大きいな改正点です。例えば、著作者(著作権者)が出版社に、電子出版の許諾をしたとして、その出版社が電子出版をする設備やスタッフをもっていないとした場合、そのような設備やスタッフをもつ企業に再許諾をすることで電子出版ができる、ということです。


(ここからは、私が個人的に考えていることもからめて、書きます。)

ちなみに、電子出版における出版社とは、必ずしも巷でいう書籍の出版社とは限りません。
これは重要なことだと思います。条件さえみたしていれば、SNSやブログ等においても、そのサイトは出版社となりえる(といいますか、「出版権」を行使できる)可能性がある、ということです。もちろん、書きこんだ人との「契約」が必要になるでしょう。

また、侵害の差止について電子出版の出版社自らができるようになったことは、つまりインターネット上で、例えばブログ、SNS、サイト等でおきている著作権侵害に対して、著作者(著作権者)のみならず出版社が自ら単独で直接的に、差止請求ができるようになったということです。
例えば連載マンガを「自炊」し勝手にアップロードした人がいてたとして、これまでは、出版社は著作者(著作権者)にそれを伝えて、著作者(著作権者)に差止請求をしてもらうことができましたが、基本的に出版社自らが差止請求をすることはできませんでした。
しかし、今回の改正で、電子出版での「出版権」が設定された出版社は、自ら単独で直接差止請求をすることが可能になったわけです。
そして、その差止の範囲ですが、1ページに満たないページの一部、一コマのレベルでも、差止請求ができる、ようなのです。
もしかしたら、SNSでのアイコンにマンガのあるページのキャラクターの顔を使ったり、マンガのあるページの1コマをSNSやブログにアップした場合、差止ようと思えば、できるかもしれないようになる、ということです。
まあ、極端な話です(笑)ね。
でも、例えば、マンガを1話丸ごとPDFにとりアップロードした、というような場合は、間違いなく出版社は動くでしょう。
こういう動きが今後でてくるかどうかわかりませんが、SNSやブログ、サイトで、許諾なく他人の出版著作物をアップロードした人は、それがごくごく部分的なものでも、やろうと思えば出版社は差止請求ができる、ということです。
今後、何らかの出版社のアクション(最悪、訴訟)が行われ、これが増えていくのでないか、と私は思います。



(その2に続きます)