知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

「おふくろさん」と「あいたい」と著作権 ※追記有

本当は今日から知的財産管理技能検定1級ブランド学科試験サンプル問題の自分学習用解説を書く予定でしたが、ちょっと気になったことがおこりまして、これについて先に書きます。


かつて「おふくろさん」事件がありました。森進一さんが、紅白歌合戦で「おふくろさん」を歌う際、勝手に通常の歌詞の前に一節セリフを加えたことが、作詞をした川内さんの怒りをかってしまい、その後森進一さんは「おふくろさん」をしばらく歌えなくなった、という事件です。川内さんの死後、遺族の方々と森進一さんは和解されたみたいで、今は大丈夫のようです。

そして、今度は「あいたい」でも、同じような事件がおきています。沢田知可子さんのアルバム(昨年発売)にかつてのヒット曲「あいたい」を収録する際、歌詞の前に一節新しいセリフを加えたらしく(別な情報では、一部を勝手に英語の歌詞にさしかえたらしい、とのことです。不確かな情報ですみません。)、それで作詞をした沢ちひろさんの怒りをかい、現在裁判にまでなっているようです。

これらについて思うのは、「なぜ最初に当該作詞者に許諾を得なかったのか」、ということです。もちろん許諾を得ようとして断られる可能性もありますし、むしろその方が高いです。でも、断られたら、冒頭に一節セリフをつけ加える(あるいは歌詞のさしかえをする)のをやめればいいだけのことです。これで不要なトラブルを避けることができます。

厳密に言えば、歌詞の冒頭に一節セリフをつけ加えること(歌詞をさしかえること)は著作者の同一性保持権の侵害になるといえるでしょう。そしてさらに、歌詞の冒頭に一節セリフをつけ加えること(歌詞をさしかえること)は十分二次創作であり、許諾なく行えば、著作権者の二次的権利の侵害になるといえるでしょう。少なくとも、そのリスクは考慮するべきです。

音楽の演奏等でのリアルタイムの行為である「アドリブ」の場合を除けば、著作者や著作権者に許諾を求めるだけの時間は普通あると思います。そして、それでもし許諾をもらえなければ、やめればいいだけの話なのです。まして、今回の場合は、著作者、著作権者は明確にわかるわけですから、許諾を求めることはできたはずです。それをしないのは、怠慢以外の何ものでもなく、十分に故意で、悪質だと思います。

現実においては、著作者や著作権者に許諾を得ないケースが圧倒的に多いと思います。これは本当はだめです。厳密に言えば違法行為なんです。
でも実際はこれがまかり通っています。それは、単に侵害されている事実を知らないか、あるいは黙認している(ということにしている)だけです。コミケでの同人誌の場合はまさにこれです。
なお、著作権侵害の場合、刑事でも民事でも、侵害された側が動かなければ、まず問題になりません(例外はあり、刑事でも親告罪ではない場合もあります。御注意を。)。

でも、これは素人、アマチュアでの話(最近は小林幸子さんがコミケに参加するなど、一概にそうとはいえなくなりましたけどね。)。素人、アマチュアだから、大目に見られるのだと思います。
少なくとも、「おふくろさん」や「あいたい」の場合は、これはプロの世界の話です。プロの世界で、著作権処理がちゃんとされていない、ちゃんと許諾を得ることがされていない、というのは、なんだかな、と思います。
関係者はみな素人ですか?そんな人達が業界を仕切っているのですか?今もエンターテイメント業界は、昔のような、ヤクザないいかげんな世界なのですか?

そうでなくとも、今は、テクノロジーの発達、インターネットやSNSなどが広まったことにより、もはや、著作権においては、プロと、素人、アマチュアの垣根はなくなったといえると思います。こんな時代だからこそ、許諾を得ることはとても重要だと思いますし、許諾を得ることができないならその表現行為を止めるべき、だとも思います。プロでも、素人、アマチュアでも。
逆に言えば、積極的に自らの著作物を他人に使わせてもいいなら、その意思表示をあらかじめしておけばいいわけです。これがいわゆる「クリエイティブ・コモンズ」の発想だと思います。

もちろん、「引用」のような、法で決められていることは別です。法に従って、ちゃんと「引用」などをすればいいだけの話ですから、誤解なきようお願いします。


えっ、私のブログ?私のブログなんざ、人様に使ってもらうほどたいしたものではありません。ですから、私が書いたブログをもし使いたい方がいましたら、もう御自由に積極的に使ってください。ただ、使ったなら「使ったよ」と、一言いただけると、こちらとしてもなんか嬉しいです。


追記
「あいたい」のケースでは、最初「あいたい」を収録してアルバムを出したが、沢さんからの指摘で発売中止、その後「あいたい」を収録せずに再発売したということのようで、これについても沢さんは訴えていると思います。レコード制作側は自分達のしたことはマズイと思ったのでしょうから発売を一旦中止したわけで、それを今度は収録しないで再発売したのは、報復措置というか、度量が小さいというか。冒頭のセリフだけをカットしてミックスし直せばいいだけの話だと思います。その分金や時間、手間がかかりますが、それはレコード制作側の自業自得だと思います。


追記2
沢田知可子さん自身については、昨年?のテレビでの「あいたい」の替え歌の件も問題とされているようです。これも、リスクがある話であり、そうである以上、前もって許諾を求め、許諾が得られなければやらなければいい、それだけの話、だと私は思います。
とはいえ、いくら深い思いいれのある作詞でも、バラエティー番組で1回こっきりの替え歌に対して、許諾をしないのは、逆に沢ちひろさんは「大人気ない」と思われてしまうのではないか、と思います。何度も繰り返し替え歌を歌われたら、めちゃくちゃ嫌な気分になりますでしょうけど、1回こっきりなら許諾を与えてもいいような気がします。
もっとも、許諾を求めなかった以上、著作権法沢田知可子さんには当然それなりの問題がある、と私は考えます。
沢田知可子さんばかりについて書きましたが、この番組の件については、放送局であるTBSにも問題がある、と私は考えます。)


追記3
替え歌芸人、嘉門達夫さんの場合を考えてみましょう。
たとえ嘉門達夫さんの場合でも、厳密に言えば、替え歌は著作権侵害行為です。まして、嘉門達夫さんのように、プロの芸人ならば当然のこと、著作権侵害行為を考慮して、許諾をえるべきです。
では、なぜこれまで、嘉門達夫さんの替え歌は問題にならなかったのでしょうか?(もしかしたら、私の知らないところで、嘉門達夫さんに著作権侵害のクレームがあったのかもしれませんが、私は知りません。すみませんがあしからず。)
考えられる理由は二つあります。
一つ目は、ちゃんと許諾をとって替え歌を歌っていたから、です。
二つ目は、許諾をとってはいないが、替え歌は嘉門達夫さんの芸であるとして、替え歌をされた人は大目にみたため、著作権侵害について訴えることはしなかったから、です。
前者の場合、許諾を得てしているわけですから、行為自体は著作権侵害行為であっても、当然問題にはなりません。
後者の場合、実際には著作権侵害行為であっても、これに対して侵害者に何らかのアクション(最悪は裁判に訴える)を起こさない限り、民事上問題にはならないわけです。また、刑事上では、著作権犯罪は親告罪(例外がありますので御注意を)ですから、侵害された側は被害者として警察に被害を申し出る必要があります。警察に被害をうったえでない以上、刑事で動くことはありません(前述のとおりの親告罪ではない例外の場合は、もちろん話は別です。)。
結論として、行為自体は著作権侵害行為であっても、どちらかの理由で問題にならない(問題にはされない)、と考えることができます。
沢田知可子さんも、替え歌芸人ならば、著作権侵害で訴えられることはなかったかもしれませんね。