知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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オープン戦略/クローズ戦略とデファクトスタンダード

第19回知的財産管理技能検定学科試験問題、問33の選択肢アが気になっています。


模範解答によると、選択肢アは適切ということになります。つまり、独占戦略(クローズ戦略)により、自社製品のデファクトスタンダードを目指すことができる、ということです。
ですが、オープン戦略でも、自社製品のデファクトスタンダードを目指すことができます。
オープン戦略/クローズ戦略は、手段にすぎません。手段は異なるということです。しかし、そのどちらの手段でも、デファクトスタンダードを目指すことができます。

選択肢アは確かに正しいです。正しいですが、デファクトスタンダードの達成はオープン戦略でもできますので、なんか釈然としません。

まあ、他に明らかな間違いの選択肢がありますから、問題を解くにあたり、細かい点は気にしなくていいのでしょう、ということだと思います。


なお、オープン戦略とは、他社に自社技術を公開し、他社と協力しながら自社製品や互換性のある他社製品を事実上の標準(デファクトスタンダード)とすることを狙う戦略のことをいいます。市場は、寡占ないしは開放の状態です。
そしてクローズ戦略とは、競合他社からの追随を防ぎつつ、自社製品を事実上の標準(デファクトスタンダード)とすることを狙う戦略のことをいいます。市場は、独占ないしは(オープン戦略の場合と比較して小さい)寡占の状態です。

前者は、自社内の経営資源だけでなく、外部の経営資源を有効的に活用することで、迅速に商品開発ができますし、その開発した商品の普及も早くよって早く市場を占有(この場合、独占でなくて寡占)することができます。
後者は、自社資源だけしか活用できないので、商品の開発が遅く、その開発した商品の普及もオープン戦略と比較して限定的なものになりますが、この戦略が成功すれば、市場を独占(または小規模の寡占)することができ、そして非常に大きな利益を得ることができ、いわゆるひとり勝ち状態となります。
このような違いがあります。


また、第19回知的財産管理技能検定学科試験自分用解説の問33のところで、選択肢アについて、デファクトスタンダードの実例としてあげたビデオテープの規格であるVHSは、前者のオープン戦略によるデファクトスタンダードの例です。あれは、単にデファクトスタンダードの例としてあげたにすぎず、クローズ戦略によるデファクトスタンダードの例としてあげたのではありませんので御注意ください。

もっとも、オープン戦略/クローズ戦略は、はっきりわけられるものではないようです。考え方、見方により、オープン戦略だったり、クローズ戦略だったり、と異なる場合があるようです。
また、一つの商品において、オープン戦略とクローズ戦略を巧みに使い分けている場合もあるようです。「初音ミク」というソフトウェアは、その根幹ソフトウェア技術である「ヴォーカロイド」はクローズ戦略、「初音ミク」というキャラクター(?)はオープン戦略、と複合戦略をとっている、という論評もあり、これは非常に興味深い考え方です。


そういえば、オープン戦略によるデファクトスタンダードを狙う作戦、つい最近もトヨタの無償特許開放という実例がでましたね。聞いた話では、特許を使いたいと申し出てきた企業に対してのみ、契約を取り交わした上で、無償特許開放をするようです。特許を使いたい企業が、トヨタの許諾を得ずに自由に特許が使える、ということではないようです。
特許技術を無償開放しつつも、誰かれかまわず開放するのではなく、ちゃんと契約を交わし権利を維持しながらそのコントロールをしつつ、市場を自社の特許技術で占有し、デファクトスタンダードを狙うわけです。テスラモーターズも特許技術開放をしましたが、これは許諾なしに本当に自由に使える非常にオープンなもので、比較すれば、トヨタはかなり狡猾です(笑)。流石トヨタ(笑)。
もちろん開放する特許技術の数も桁違いでトヨタの方が大きいです。だから、テスラモーターズみたいに、みすみす特許技術を自由に使えるようにするわけにはいかなかったのだと思います。

なんにせよ、今後のトヨタのこの成り行きは要注目です、ね。