知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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Yチェア立体商標事件

カール・ハンセン&サン ジャパンという、デンマークのメーカーの日本法人は、Yチェアという世界的に知られている、独特のデザインのイスを、日本で販売していました。
そのYチェアの意匠権が切れた後、Yチェアに類似したいわゆるジェネリック家具がたくさん作られ販売されてしまいました。困ったカール・ハンセン&サン ジャパンは、その対策のために、Yチェアを立体商標として出願申請しました。
ですが、特許庁に拒絶査定され、その後おこした審判においてもその拒絶査定を覆すことはできませんでした。そこで最終的に拒絶査定審決取消訴訟をおこし、それに勝訴しました。結果、カール・ハンセン&サン ジャパンは、Yチェアの立体商標としての登録が認められました。

前回より再掲載しましたが、これがこの事件の簡単な概要説明です。


この会社カール・ハンセン&サン ジャパンは、前回ブログの※1の事件例のギブソンとは違い、Yチェアの類似品を製造販売した様々な企業に対して、Yチェアの(「立体」商標ではなく)「文字」商標の商標権、及び不正競争防止法違反、これらを根拠として、警告状を送る等厳しく対処をしていたそうです。実際に、不正競争防止法違反に該当しているかどうなのかは、正直私にはわかりません。しかし、「警告等何らかの対処をちゃんとしていること」が重要ではないか、と思います。これをしていないと、ただでさえ意匠権がなくなったのに、さらにダイリューションを加速させてしまうことになりかねませんから。
また、カール・ハンセン&サンは、世間にYチェアを広く認知してもらうためにかなり企業努力をしてきたそうです。
結果、Yチェアは、日本でも有名となり、また日本で最も売れたイスの一つであると裁判で認められ、また裁判で前述の対処や努力が認められ、結果「商標として識別力がある」と判断され勝訴することができました。そして立体商標の登録が認められたそうです。


登録し権利を獲得することは重要です。
しかし、申請すれば必ず登録できるわけではなく、登録を認めてもらうための努力が必要な場合もあるのだ、とつくづく感じた裁判例でした。立体商標の場合は、ほとんどそうかもしれませんね。
また、権利を取得しても、それに甘んじることなく、権利を守っていく努力も必要なのだな、とも思いました。


このYチェア立体商標事件のみならず、マグライト立体商標事件以降の主要な立体商標の裁判例、基本的なことはおさえておいた方がいいと思います。特に、個人的には、少なくとも、マグライト立体商標事件とヤクルト容器立体商標第二事件、この二つの裁判例の基本的内容は最低限覚えておくべきかと思います。


立体商標、なかなか面白いですよ。