知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験に向けて諸々のこと、その他書籍やニュースなどの知財、その他の法律等に関して、思いついたら書きます

ガバナンスと契約 社員統治と再委託条項

逮捕された、情報漏洩をした犯人は、ベネッセの、そのグループ企業であるSE会社の、さらにその協力会社の社員、だそうですね。つまり、孫請け会社の社員です(SE会社は、同じグループ内でも、企業としての存在はベネッセと別なのですから、委託関係上、下請けになります。)。

ベネッセと、グループ企業であるSE会社との間では、おそらくちゃんと契約はされていたと思います。また、グループ企業であるSE会社と、その協力会社との間でも、おそらくちゃんと契約がされていたと思います。

今回は、協力会社の社員がベネッセに派遣されておきた事件です。
そこで考えるべきは、ベネッセと協力会社との間はどうなっているのか、という点と、協力会社のその社員に対するガバナンスはどうなっているのか、という点です。

「再委託条項」という条項があります。これは受託した会社がさらに別の会社に委託できるというものです。

おそらく、ベネッセとグループ企業のSE会社との間での契約でも、この条項はあったと思います。だから、SE会社は再委託ができます。
しかし、ベネッセは協力会社に対して直接義務を課すことは、契約の理屈として、できません。ベネッセと再委託先の協力会社との間は、直接の契約関係ではないからです。
契約上、協力会社に義務を課すことができるのはSE会社です。なので、ベネッセは、協力会社に義務を課すよりSE会社に頼むことしかできません。契約上、ベネッセは協力会社に対し直接何もできないのです。
もっとも、おそらく、(過去の判例に基づけば)ベネッセは協力会社から派遣された社員に対する実質的な監督責任はある、とされるでしょう。

また、協力会社は、その社員に対して、ちゃんとガバナンスをしなければならないでしょう。社員教育レベルから、社内規定、さらには社内で契約をして、協力会社は、社員の手綱をちゃんとひかねばならない、ということです。


将来は、ベネッセのような委託元の企業は、派遣された協力会社の社員に対する強い監督権限を持たなければいけなくなるでしょう。

少なくとも、下請け会社に対しては、前述の「再委託条項」が大きくかわります。概念が変わるわけです。
下請け会社の、その再委託先の会社への、監督「義務」は強化されるでしょうし、それを委託元企業がチェックできる契約になり、これに違反したら何らかのペナルティを負う契約へと変わっていくことでしょう。そして、委託元企業は、下請けはおろか、孫請け、あるいは孫請けよりさらにさきの企業にコミットできる契約になっていくのではないでしょうか。
このような、新しい形の「再委託条項」を、すでに契約に採用している企業もあるようです。

さらにもっといえば、直接に、委託元企業と、孫請け会社等から派遣された社員との間で、機密保持をはじめとする内容の契約がなされていくことになるでしょう。
作業指示と金の支払いについてはこれまで通り、委託元→下請け→孫請け→孫請け会社の社員、という流れで変わりませんが、孫請け会社の社員が委託元企業に出向いて作業する等の場合は、その派遣された社員と委託元企業との間で、業務の監督を直接できる契約をして、またその契約の締結を、下請け、孫請けの会社が認めざるを得ない、ということになっていきそうな気がします。もちろんこの場合でも、下請け、孫請けの会社には、これまでと全く変わらない責任が生ずることは、言うまでもありません。



もはや、ここまでしないとダメな時代になった、と認識しないとだめではないか、と私は考えます。