知財管理技能検定1級ブランド専門業務試験合格への道かな?

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完全合意条項と別途協議条項

ちょっと知財とはなれたことを書きます。


昨日「完全合意条項」などと書きましたが、これ、個人的には、英文契約書の最重要基本概念だと思っています。
日本での契約書との一番大きな違いはこれではないかと思っています。

ちなみに、「完全合意条項」とはなんぞやと言いますと、「契約書に書かれた契約内容以外は契約内容として認めませんよー」という条項のことです。
何のためにこの条項があるかと言いますと、契約内容をとりきめる際などにした口約束を排除するためです。口約束に限りませんが、とにかく契約書に書かれた、つまり文面化、書面化された、契約内容しか認めない、ということです。逆に言えば、「契約書に書かれていないことは、互いに好き勝手にやっても文句ないですよね」ということでもあります。
だから、細かいことまできっちり取り決めるのです。海外の、特にアメリカの企業との契約書は厚い理由がここにあります。きっちり決めているから当然そうなります。逆に決めないと後で大変なことになりますから、ちゃんといろいろ想定してあらかじめ決めておくわけです。これと比べると、日本の契約書なんて本当に薄っぺらいです。私が担当した契約のなかで、日本の企業でアメリカなみに厚い契約書をだしてきたのは一社だけでした。ただ、残念なことにそれは雛型化されていて、契約内容の話し合いの余地はありませんでした。こういうとき、会社の大小や力関係はものをいうよな、と思ってしまいます。


少し脱線しました(笑)。そもそも日本では、契約の際、細かいことまで決めません。いまだに契約書を交わさない場合もあります。また、何を契約するかにもよりますが、売買取引の基本契約書なんか、本当に基本的な事項しか書いてありません。だから、日本の契約書は薄っぺらいのです。

では、想定外の事態等がおきたときどうするのか、と言いますと、そのために「別途協議条項」というものがあります。
たいていは、契約書の終わりあたりに書かれている条項で、「本契約書に書かれていないことや、契約書に書かれていることで後で疑義が生じたことについては、その都度協議して決めましょう」という条項です。ある意味日本らしい、日本を象徴する条項の様に思えます。

一見、便利な、そして友好的な、契約条項です。しかし、実際には問題が発生した段階で協議をしたところで何も決めることなどできないくらいこじれているでしょうから、実際には大して意味のない条項として批判する人がいます。また、契約書にこの条項を書かない様にしているところもあるそうです。

そして、最初に書いた「完全合意条項」を契約書に書くところが日本で少しずつ増えている様です。また、これの目的は口約束の排除であり、契約条項の追加や契約内容の改定を妨げるものではありません。ですから、「新たに取り決めた契約条項の追加や契約内容の改定は、書面にて行う」というような条項を付け加えたりしているようです。


あくまで私見ですが、今日本でも海外(特にアメリカ)の様な契約が少しずつ主流なりつつある様に感じます。個人的には、大歓迎です。できれば、雛型を使わず、契約のたびに、ちゃんと内容の取り決めの話し合いをしてひとつひとつ決める、その様になってほしいです。これは非常に大変な作業になるだろうと容易に想像できます。でも、この方がかえって安心するのは、私だけでしょうか?現在の日本の契約書はいまだ、契約事項が少なく内容が薄すぎて、私には不安で不安で仕方がないです。


まあ、実際に日本で海外と同様の契約概念になるにはまだまだだいぶ時間がかかるとは思います。その前に、おそらく民法の大改正があるでしょう。その際、民法の契約に関する部分も少なからず変わると思います、といいますか、変わってほしいです。
こんな契約で世界でのビジネスにおいて本気で通用すると考えているのでしょうか。甘いでしょう。現在の日本の契約は所詮、ガラパゴス契約、ガラケーですよ(笑)。


(この話を突き詰めると、「英米法大陸法の違い」にまでいくのではないか、と思います。このテーマは、これはこれで面白いので、いずれ書きたいと思います。いずれ。)